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私Aは私Bを呼んだ  作者: 源義史
Bの世界
10/23

天才現る part1

 気が付くと、そこは学校の教室だった。よかった。無事、もう一つの世界には来られたようだ。ということは、今の私は私Bということか。


 ここに来るのはもう六回目だからか、私は驚くほど冷静に事態を分析できていた。教壇には、化学の女の先生。今日も、相変わらずテンションが高い。毎朝、カラフルなキノコでも食べているのだろうか。まあ、そんなことはどうでもいいか。


 とりあえず、あっちに戻るまでは黙っていることにしよう。なんとなくもったいない気はするが、あまりここで暴れてしまうと、私Aの方に支障が出てしまう。


「ねえ。ねえねえ。あのさ。ほらこれ。なんだったっけ。昨日の復習。わかる?」


 やけに親しげな先生の声が、私にパラパラとふりかかる。何がおかしいのやら、にやにやにやにや笑いながらこちらを見ている。参った。今日は指してほしくなかった。先生のことは割と好きだったが、今日で嫌いになりそうだ。


 そもそも、彼女の言う「これ」とやらも、私にはちんぷんかんぷんだ。それに、これは授業中のちゃんとした質問だから、いくら彼女の精神異常が疑われるといっても無視するわけにはいかない。まあ、シンプルに「わかりません」とだけ言えば、それでいいだろう。


「う~ん。あっ。それ〝だけ〟わかんないです。それ以外はわかるんですけどねぇ」


 一体何があったのか。確かに、私は脳内で、「わかりません」とだけつぶやいたはずだ。またもや、頭より先に口が動いたということか。私はただただ茫然としていた。


 それに引き換え、周りのクラスメートはというと、「さすが!」、「待ってました!」と言わんばかりの大爆笑。先生は、意外なことに、と言ったら怒られそうだが、大人の女性らしく静かに笑っていた。


 まただ。三週間前とまったく同じ状況。こっちの世界では、私は「クラスのエンターテイナー」の地位を確固たるものとしているようだ。


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