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ー異世界生活ー

執筆初心者のため、温かい目で見守りください。

あの日、死と現世の狭間でイケメン神に会った日、俺は奴にこう言った。


「強いて言うなら、買ったばかりのゲームをクリアできなかったことだ。」


イケメン神は目を丸くする。

そして、クククと笑い出すのだった。


「なんとも…奇妙な心残りですね。そんな理由でここに来た人は今までいませんでしたよ。」


イケメン神は笑続ける。

しかし、馬鹿にしていると言う感じはしなかった。むしろ感心していると言った方が合っている。


「わかりました。その願い叶えましょう。」


そういうと奴は持っていたメモに何かを書き込む。


「叶えるって、ここで続きをやらせてくれるのか?」


俺は謎の力で出てきたベッドやソファを見て、同じように出てくるゲーム機とモニターを想像した。


しかし


「いえいえ、ここにはそう長く滞在できないのです。もって後5分でしょうか。あなたの体も薄くなり始めていますしね。」


言われて初めて気づく。


確かに俺の腕は透けて、向こう側が見えている。


「え、これ消えたらどうなるの?」


「魂が消滅します。心残りも何もなかったことなります。」



ええ…。なにそれ……。


「まぁ、人を殺したいだとか、悪逆の限りを尽くしたいだとか不道徳な心残りを持った人への対策ですね。」


なるほど、そう言った人間はここで放置されて消えてしまうわけか。


「それじゃあ一体どうやって俺の願いを叶えるんだ?」


「時間もありませんから簡単に説明しましょう。まずはこれをご覧ください。」


そういってイケメン神が指を鳴らす。


すると、無数の球体が奴の周りに現れる。

球体は一つ一つが惑星のようで、地球に似たものもいくつかあった。


「これはあなたのいた現世とは違う世界たちです。いわゆるパラレルワールド。と言うものでしょうか。」



パラレルワールド…SFものでよく聞くあれか、自分の世界によく似たもう一つの世界、みたいな。


「これらの世界は無数に存在します。個々で独立していて、一つとして同じ世界はありません。しかし、これらは全くとして繋がっていないわけではないのです。」


そう言ってイケメン神は一つの球体を持ち上げる。


「例えばあなたのいた世界。地球には、漫画やアニメ、小説と言った様々な創作物が存在しますね?」


イケメン神が持ち上げたのは地球のようだ。


惑星のように見えた球体が水晶のようになり、その中に漫画やアニメなどの娯楽が映って見える。


「こういった創作物は実は他の世界を表しているのです。」


イケメン神は今度は球体を指先でくるくると回しだす。


地球で遊ぶな。


「それじゃあ、つまり俺が今まで読んできた漫画や見てきたアニメの世界は実現するということか?」


「先ほどと違って飲み込みが早いですね。その通りです。完全に同じと言うわけではありませんが、概ね似た作りになっております。創作物とは他の世界を無意識のうちに表したものなのです。そして、それはゲームも例外ではありません。」


イケメン神は地球を空中に浮かべ直すと、今度は別の球体を手に取った。


「これがあなたがやっていたゲーム『アフターワールド』の世界です。剣と魔法が存在し、冒険者がいる。まさしくゲームの世界。」


なるほど、話が読めてきたぞ。


「つまり、俺をその世界に転生させてくれるというわけか。」


「その通りです。ちょうどあなたが使っていた主人公の元になった少年が生まれます。あなたはその少年になると良いでしょう。見た目もあなたが作ったものそのままのようです。」


そう言ってイケメン神は球体を俺に向かって投げる。


ぶつかった球体は弾け、俺を光で包み出す。


「あと30秒であなたは消えてしまいます。転生に問題がなければそのまま意識を手放してください。次に目覚めた時にはゲームの世界ですよ。」


転生……。


なんといい言葉だろうか。アニメや漫画、ゲームを嗜むものでこれに憧れない人間がいるだろうか、いやいない。


俺の心は決まっている。


体を包む光に身を任せ、意識を手放そうとする。


薄れゆく意識の中でイケメン神の言葉を聞いた。


「言い忘れてましたが、あなたはこの世界の主人公というわけではありません。あくまで一般人です。無理をすれば死にますのでお忘れなく。」






最初に言えええぇぇぇぇ!!!!



こうして俺は意識を手放し、次に目覚めた時には5歳の姿でファルハート家にいた。



ーーーーーーーーーー


話はアフターワールドの世界に戻り、所は変わらずファルハート家。


凛太郎改めレオナード…レオは己の婚約者と自室で対峙していた。



両者とも膝を曲げ、腰を低くし、臨戦態勢である。


「レオナード!今日こそ私の言うことを聞かせてやるわ!」


「いけませんよアリス様。貴族の令嬢様がそのような立ち振る舞いでは下のものに示しがつきません。」


レオが対峙しているのはセルフト王国の貴族、カタルファ伯爵家の次女、アリス・アル・カタルファである。金色の髪を後ろで一つにまとめ、背はレオとほぼ同じくらい。来る前に転んだのか、左の肘を擦りむいている。


子爵家の三男であるレオの婚約者であった。


「レオナードだって同じような立ち振る舞いじゃない。」


「私はアリス様から逃げるための不可抗力ですのでどうかお気になさらず。」


言うが早いがレオはアリスの隙をついて脇をすり抜ける。


そのまま扉を飛び出して、廊下を駆け抜ける。


「あ!待ちなさい!!」


レオとアリスの鬼ごっこはこの屋敷での日常だった。


通常、婚約者と言っても毎日会うことはない。


しかし、アリスはレオを気に入っていてほとんど毎日遊びに来ている。


対するレオにとって、アリスは苦手なタイプだった。


前世を通して女性経験が豊富でないレオにとって、自分にグイグイくる彼女は、どちらかと言えば怖いと思う対象だった。


また、レオにはすべきことがあった。

アリスの来訪はそれを邪魔される捨てイベントでしかなかった。



レオは後ろを振り返ることなく広い屋敷の中を走り回る。


後ろから聴こえてくるお嬢様の叫び声は、角を5回曲がったところで完全に聞こえなくなった。


完全に撒いたと判断し、いつものように屋敷の二階の一番奥の部屋、図書室へと向かう。



この世界に初めてきた時、正確には前世の記憶を持った時、レオは5歳であった。


凛太郎の魂が5歳の少年に乗り移ったのか、5歳になり物心がつき、前世の記憶が蘇ったのかはわからない。


できれば後者であってほしいとレオは願っている。前者であれば5歳の少年に後ろめたい思いを感じてしまうからだ。


なにはともあれ、この世界に転載したレオはまずこの世界を知ることから始めた。


なにせ、ここはゲームの世界ではあるがゲームではない。チュートリアルなどはなく、失敗したらロードしてやり直すなんてこともできないのだ。


まずは自分の置かれている状況を知ろうと考えたのだ。


初めは屋敷の使用人や、両親、2人いた兄に色々と聞いて回った。


それによりわかったことはここが確かにセルフトという名の国で、自分はそこの貴族の三男であること。


この世界には冒険者と呼ばれる人たちがいて、モンスターと戦って暮らしていること。


この世界に魔法が存在すること。


であった。


しかし、あまりにもレオが質問ばかりするので屋敷中の人間にうんざりとした顔をされるようになってしまった。


実の兄である次男のアルフォンスには「お前は1つの答えに対して10の質問をする好奇心の魔物だな。」とまで言われてしまった。


仕方がないので今度は屋敷にある図書室で本を読みあさり、文字を覚えながら世界について調べることにしたのだ。


図書室には世界の歴史や貴族家の心得から、冒険者の自伝、童話のような物語まであった。


その童話の一つにかつて「刀」と呼ばれる武器を用いて戦っていた民族の話があり、レオは少し嬉しくなった。


図書室に籠る生活を3ヶ月ほど続けた頃、父であるエリクに婚約者の話をされた。


「本来なら三男であるお前に次女とはいえ、伯爵家のお嬢様が嫁ぎにくることはないのだが…。どうやら飛んだおてんばのようでな。貰い手がなくついにお前のところにまで話が回ってきた。」


5歳にして嫁をもらうとは思ってもみなかったし、相手も5歳にして貰い手がいなくなるとは思わなかっただろう。


とにかく、そんな父の言葉からアリスとの追いかけっこが始まったのだ。


初めて会った日、レオの前に仁王立ちするアリスは


「あなたがレオナードね?言っておくけど私、自分より弱い奴の婚約者になるのは嫌よ!」


と言ってのけた。


ポカンとするレオを前に、アリスは木剣を振りかぶり襲いかかる。


間一髪で避けたレオはすぐさま逃げ出すのだった。


剣の稽古をさぼり、普段は図書室に篭りっきりのくせに、レオの足は早い。


どうやら運動神経はそこそこいい方のようだ。



また、前世に嫌な上司から隠れてやり過ごしていたという経験が、アリスの猛追を交わし続けていた。



こうして、2人の鬼ごっこは始まり、1年が経ち、レオが6歳を迎えた今でも続いているのだった。



 

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