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ー解放者、神に会うー

目が覚めると、そこは白い部屋だった。


あたりには何もなく黒いシンプルな扉があるだけだ。


窓すらない。


「あれ、ここどこだ?てか、火事は?病院なのか?」


自分がベッドではなく床で寝ていたことを思い出す。

病院だとしたら対応が酷すぎるな。


立ち上がり、自分の体に怪我がないか触って確認する。


そして異変に気付いた。


「なんか体に触らないんだけど?」


胸部を触ろうとした手は見事にすり抜け、体の中へと入っていく。


腰、足と試してみたがどこも同じだった。


「なにこれ怖い!」


自分の体に起きた変化に戸惑っていると、黒い扉がノックされた。


ガチャリと重厚感のある音ともに扉が開く。


入ってきたのは銀髪の爽やか風イケメンだった。


「やあ、お目覚めのようだね。」


まるでキラーンという効果音が聞こえそうな笑みをイケメンが浮かべる。


「イケメンが入ってきた!てかなにこれ?見てよ!体触れないんだよ!なにこれどっきり!?」


凛太郎は焦ったように自分の体を貫いて見せる。

入ってきたイケメンはその様子を見て苦笑している。


「まぁ落ち着いてください。順を追って説明しましょう。」


そう言ってイケメンは指を鳴らす。すると、何もなかったはずの部屋にモダンなソファとテーブル、入れ立てのように湯気が立つ紅茶が出てきた。


その様子を見て凛太郎はついに言葉に詰まる。


イケメンはまぁまぁという感じで凛太郎をなだめ、ソファへと座らせた。


「さて、お気づきかと思いますがここはあなたのいた世界ではありません。というかあなたは……その…死にました。」


「あ、…ああ、…。」


凛太郎はまだこの状況を飲み込めずにいた。


自分が死んだ?


確かに火事になった部屋の中で意識を失ったのは覚えている。


あの火事によって自分は死んでしまったというのだろうか。


それならばここはなんだ?


天国なのか?だから自分に触ることもできないのか?

この後自分はどうなるのか?


凛太郎の頭は許容量を超えるデータで今にもパンクしそうだ。


「落ち着いて、どうか落ち着いて。紅茶でもどうです?神界から取り寄せた最高級ものですよ。」


パニックになる凛太郎とは対照的にイケメンは落ち着いた様子で、爽やかすぎる笑顔を浮かべている。


「落ち着けって?これが落ち着いていられるか!ここはどこだ?俺はどうなる?……一体なんなんだ!?」


凛太郎は騒ぎ立てる。まさしく一般人の反応だった。


「いやー、最近の日本人にしては新鮮な、いえ、懐かしい反応ですね。」


イケメンはフフフと笑いながら紅茶を飲む。


「最近の日本人といえば、やけに飲み込みが早くて……説明のしがいがないというか。…わかりやすくあなたに説明するとすればここは死と現世の狭間。私はあなた方のいう神様的な存在です。」



凛太郎はついに頭の容量を超え、完全にパンクした。

ソファに倒れ込むと、そのまま意識を失ってしまった。



ーーーーーーーーーー


目が覚めると、そこは一面が白い部屋のままだった。



「夢じゃないのか。」


ソファで倒れたはずの凛太郎はいつのまにやら現れたベッドで寝ている。


「お目覚めですね。」


声のする方を見ると椅子に座ったイケメンが優雅に紅茶をすすっている。


「またお前か……。」


「おや、だいぶ落ち着きましたね。ようやく話ができそうでなによりです。」


イケメン神は立ち上がり、ベッドの側まで歩いてくる。

凛太郎は起き上がり、ベッドに腰掛けることにした。


「まぁ、なんとなく話が飲み込めたよ。俺は死んで、ここは死後の世界。お前は神で……これからどうなるんだ?」


深くため息をつく。死んでしまったのだ。明日からの有意義なゲームライフが潰えた。


「ええ、そんなところですが、正確にはここは死と現世の狭間なのです。普通の人はここには来ません。魂を浄化され次なる世界に旅立つのです。」


「普通の人は?」


「ええ、ここに来るのは現世に何かしらの心残りがある人です。私の役目はそんな人たちの願いを聞き入れ、極力叶えることです。あなたの心残りはなんですか?」


イケメン神はようやく紅茶を飲み終えたようで、今度は何かの書類と万年筆を出している。

凛太郎に向き合い、メモを取るそぶりを見せる。


「心残り、か。」


しばらく考え込み、自分には大した心残りがないことに気づく。


親は数年前に他界しているし、兄弟はいない。元カノのことは気になるが未練があるわけではない。


仕事だってすでに辞めた身だ。就職活動をしなくて済むことを考えれば、むしろ死んでよかったとまで言える。


しいてあげるとするならば……。



「あのさ、俺多分未練なんてほとんどないんだ。強いて言うとすれば……。」



その後出る凛太郎の言葉にイケメン神は驚きつつも笑いながら答えるのである。


ーその願い叶えましょう。ー


と。



ーーーーーーーーーー


「レオナード!レオナード!」


廊下に響く声に、凛太郎……レオナード・エル・ファルアートはため息をついた。


声に遅れてドタドタと廊下を走る音が聞こえる。

音はどんどんと近づき、扉の前で止まった。

止まったと思いきや、今度はノックもなしに部屋の扉が開かれる。


「遊びに来たわよ!レオナード!!」


入ってきたのはアリス・アル・カタリファ。


レオナードの婚約者であった。


ところはセルフト王国貴族。ファルアート家の屋敷である。


そう!


凛太郎は、この新しい世界……ゲームの世界でレオナード・エル・ファルアートとして生まれ変わったのである。



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