召喚前夜
今回の話ではまだ異世界には行きません。
次回から異世界に行ってストーリーが本格的にスタートします。
平凡だ。俺の人生は平凡すぎる。
俺の名前は並木真魔どこにでもいる高校二年生だ。……おっと、そこら辺にいる平凡な奴らと一緒だと思うなよ。俺こそが真の平凡……そう! 平凡の中の平凡、平凡オブ平凡なのだ!
学校に行けば勉強をする、友達と話す、勉強をする、そして帰る。部活に入ってもいないし、生徒会に所属している訳でもなければ何か長所があるわけでもない。
今もいつもと同じように放課後になったので家に帰るところだ。教室の中には部活に向かう用意をしている生徒が何人か残っている。残っている生徒に挨拶をすると俺は荷物を手に取って教室を後にした。
生徒玄関へと着くと自分の下駄箱から靴を取り出し地面へと落とした。思いのほかに靴を落とした音が響いたせいで生徒玄関にいた生徒のほとんどの視線が俺へと向けられている。
視線を浴びて恥ずかしくなった俺は逃げるようにその場から立ち去った。
あまりの恥ずかしさに何も考えずしばらく歩いているといつの間にか俺は家のすぐ近くにあるコンビニまで来ていた。
コンビニか……丁度いいし勇奈に何か買って行くか。
勇奈は中学二年生の俺の妹だ。天真爛漫で破天荒な性格。その上俺の妹のくせに可愛いと来た。ラノベの世界だったらきっと勇奈みたいな奴が主人公になったりするんだろうな。
今日は熱を出して学校を休んでいる勇奈のためにコンビニでプリンを買うと家に帰る道をもう一度歩き始めた。
妹にためにわざわざプリンを買って帰るなんて俺はなんて優しいんだ。世界一最高の兄貴なんじゃね。……なんて、そんなわけないんだけど。
次の角を曲がれば家が見えてくるところである物が落ちていることに気付いた俺は足を止めた。
そこに落ちていたのは去年の勇奈の誕生日に俺がプレゼントした髪飾りだった。
俺がプレゼントしたその日から勇奈はその髪飾りを欠かすことなく毎日つけていたはずだ……それがどうしてここに……。
そこまで考えて俺の思考は凍り付いた。考えうる最悪の可能性を考えたからだ。
俺は急いで近くを探し始めた。公園、コンビニ、図書館。勇奈が行きそうなところをひたすら探したが何処にも勇奈の姿はなかった。
帰り道で勇奈の髪飾りを見つけてからずっと勇奈を探していたせいでいつの間にか日が落ちて辺りは暗闇に包まれていた。
「勇奈……どこ行ったんだよ」
やり場のない声が自然と口から洩れていた。
本当は全部俺の勘違いで髪飾りは他の人の物で勇奈が家で寝ていることを願って俺は家へ帰ろうとしたがスマホに母親から電話がかかって来たので足を止めた。電話に出てスマホを耳に当てる。
「真魔? あんた今どこ行ってるの。勇奈も家にいないみたいなんだけど一緒にいるの?」
その声を聞いた瞬間にスマホは手から滑り落ち地面へと落ちた。俺は膝から地面に崩れ落ちると声にもならないような叫び声を上げた。
地面に落ちた衝撃でスマホの画面は割れさっきまで表示されていた通話中の表示も消えてしまっている。
「……勇奈」
俺はつぶやくとそのままその場へと倒れ込んだ……。
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一週間に最低でも一話ずつ出して行くつもりですが、出す曜日と一話分の長さは不規則になってしまうと思います。文章を書くのがあまりうまくないのでアドバイスをもらえると助かります。