#作戦開始、#いざ出陣
「おい、起きろや」
ストロガノフの声とローキックで目が覚めた。
足をバタつかせていたら、いつの間にか眠ってしまったようだ。しかし、眠ったら頭がスッキリした。
先ほどの女と出来事は、夢だったと思うことにしよう。
ーー時刻は深夜12時。
周囲は深い闇に包まれ、耳鳴りがするほど静かだ。
(ついにこの時がきた。
勇者を討伐して、魔界と人間界の永き戦いに終止符を打つのだ)
山奥村カストの入口に立って深呼吸。
勝負服である、真紅のマントを颯爽とひるがえし、声高々に叫んだ。
「いざ、出陣っ!」
「………………」
どうやらヤンキーたちはすでに村に侵入していたようだ。
ストロガノフとザンギが暴れている間、我はペチカを歌いながら村の周囲に火を放つ。
「うわあああ! 魔物だあああ!」
「逃げろおお!」
時折、聞こえる悲鳴が心地良い。
普段は恐ろしいヤンキーたちだが、いまは心強い存在。高い金を支払う価値があったというものだ。
「よし、これでOKだ」
村周辺に火をつけ終わったので、様子を見に入ると、ストロガノフとザンギに追い詰められた人間どもが、蜘蛛の子を散らすように逃げまとっていた。
「みんな! 神殿へ集まるんだ!」
リーダーシップをとり、村人たちを神殿に集めているのは、勇者とヤツのインスタで見た神官だった。
神官はシュッとした輪郭に、肩につきそうな黒のサラサラヘア。
切れ長でダークブラウンの瞳と、少し厚めの唇が、優男感を醸し出している。
小柄だが引き締まった体には、神官の証である純白の法衣にブルーのマントを身につけ、手には賢者の石が埋め込まれた、小ぶりの純銀の槍を握っていた。
なぜ、イケメンはイケメン同士でつるむんだろう。純粋に腹が立つ。
しかも、女子供を率先して誘導しやがって。
こんな時でさえ、モテを意識しているんじゃないよっ!
まぁいい。それも今日で終わりだ!