表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/93

#譲らぬ主張

「来るぞ!」


 ストロガノフが叫ぶと同時に、窓から突風が吹き込む。

 バッサバッサと羽を広げたフェニックスの背から、武器を振りかぶったアルスと仲間たちが、王座の我に向かって飛び込んできた。


 

 ガキィィン! 


 

 ストロガノフは素早く我の前に飛び出ると、一瞬で気を集中させて、鋼鉄のようになった左腕で勇者の太刀を受け止めた。


「随分と荒っぽい登場じゃねーか」


「仕方ないだろ。入口に鍵がかかっていたからな」 


 剣をはじかれた勇者は、間合いを取りながら、ストロガノフに向かって、少しいたずらっぽく答えた。


 フェニックスは勇者一向が無事、着地したのを見守ると、奴らに向かってギャアギャアと喚き、砂埃をまき散らして去っていった。



「いつの間にフェニックスを手名付けたのだろうか……?」


 展開に乗り遅れた我は、奴のインスタチェックをやめたことを後悔していた。

 現実逃避している我をよそに、勇者はキッと鋭い眼差しで我を睨む。


「ゾーラ……。まさか貴様が悪の権化、魔王だったとはな。オーラ、カリスマ性ゼロ。その上、非情に弱そうだったから、モブだと思っていたよ」


「…………」



「純粋なトルテ、善良なテニース国王、大臣を騙し、カスト村やテニース国王を、混乱に陥れた卑怯で卑劣な所業。そして、身勝手な欲望により、多くの人間を絶望へと落とす行為、俺は絶っ対に許さない!」



 圧巻のパフォーマンスにより、ついつい聞き入ってしまったが、よくよく考えれば随分な言われようである。



 見てくれが悪い、得体が知れない。


 ため息が出るほどくだらない理由で、魔物を迫害したのは人間ではないか。

 魔物や魔族は、生きるため、これ以上迫害されないため、知識をつけて、暗黒パワーを集めているのである。

 それが、なぜ身勝手なんだ? 

 迫害したくせに、さらに何もするなという、人間のほうこそ身勝手なのではないか。


 トルテちゃんに関しては、魔王ってことを隠していたのは悪かった。

 しかし、それは嫌われたくなかったからだ。

 トルテちゃんや我の気持ちを確かめもせず、魔王と知った途端、手の平を返しで騙したなんてそれこそ卑劣ではないか。


 勇者のすべてにおいて一方的な言いぐさに、ハラワタが煮えくり返ってきた。


「貴公の正義があるように、こちらも正義がある。それが貴様らを脅かすなど、知ったことか!」



 閲覧の間に我の怒りがこだまする。


 人生でここまでイラついたのは始めてだった。

 アルスは、一瞬体をビクつかせたが、即座に心を取り戻し、真っ直ぐに剣を構えて我を見つめた。



「ならば、人間たちが希望に満ちた未来を得るため、勇者の剣を手にして貴様を封じてみせる!」



 お互いに譲らぬ主張。

 

 次元の違う者同士が交渉で歩み寄ることはできるはずもない。



「では、死ぬ気でかかってこい!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ