#我、弱し
「ていうか、お前……。こんなに弱かったの?」
仰向けに倒れた我をストロガノフが驚愕した表情で見る。
数分前――。
「ゾーラ、腕試しだ。全力でかかってこい」
ストロガノフに言われたのだが、今までケンカなどしたことない我は、戦い方がまったくもってわからなかった。
「う、うん……。えぇと……」
仕方ないので、ボクシング漫画で見たデンプシーロールで攻撃しようとしたのだが、うろ覚えだったため、左右にゆらゆらと揺れていたところ、ガラ空きのボディにストロガノフのパンチを食らいノックアウトした。
「ちょっ……、えぇ? え?」
ストロガノフがザンギと顔を見合わせる。
「やべえ。今まで戦った相手の中で一番弱ぇ!」
「つーか、魔界史上最弱じゃね?」
うるさい、我だってわかっているから、修行をお願いしているのだ。
「じゃあ暗黒魔法は? 何が得意なの?」
リコッタに聞かれる。
正直、得意な暗黒魔法などあるわけない。
「し、強いて言えば、暗黒微笑と施錠の魔法かな……」
「そんなもんは小学生でもできるわよ。てか、いままで授業中、何やっていたのよ!」
授業中はノートにオリジナルキャラを描き、壮大なストーリー漫画を作り上げていた。
でも、これを言うとみんなにオタクやら、キモいやら、絶っ対に小馬鹿にされる。
「えっと……。何もしていなかった」
「はぁ? マジで言ってんの? 本気のバカじゃん」
リコッタが驚愕の表情で我を見つめる。
だから、我だってわかっているから、修行をお願いしているというのに。
「どうするよ?」
3人は顔を見合わせると、腕を組み、深い深いため息をついた。
しばらくするとリコッタが口を開いた。
「仕方ないわね。今から全部、完璧に覚えようとしても時間がないわ。せいぜい、最弱から中途半端になるだけよ。だから、これだけは誰にも負けないってものを身につけなさいよ」
「わっ、わかった」
なんとも情けない気持ちでいっぱいになったが、これが今の我なのだ。
今までは自分の弱さを認められずに見ないふりをしていたが、今日から現実を受け止めることにしよう。
超前向きに考えれば、無力ってことはこれから何にでもなれるってことだ。
我のやる気次第で、超絶強くなることだって可能なのだ。




