#一時撤退
「ふんがぁぁああ‼︎‼︎」
暴れまくるミルクに触発されるように、ストロガノフも拳を構える。
「俺の気も収まってねーかんな。さぁ、ケンカの続きしよーぜ」
ニヤリと笑うと、指を手前に引き、勇者にかかってこいと合図した。
「くっ‼︎」
勇者は慌てて剣を構えるも、左右から迫りくる強敵に動揺して、目線と剣先が定まっていなかった。
ストロガノフはそこを狙って、力を込めた正拳突きを勇者に向かって放つ。
勇者はこれをかろうじて盾で受け止める。
「うっがあああ‼︎‼︎」
直後、ミルクがこん棒代わりにした像を勇者の脳天に向かって振り下ろした。
勇者は反射的に右に跳ねて直撃を逃れた。
ブウン。
風を切る音が耳を横切り、遅れて風圧が頬を舐める。
勇者の額にじんわりと脂汗がにじんだ。
「アルス‼︎ 無理だ‼︎ ここは一度、撤退して出直そう!」
神官の切羽詰まった声が走る。
「いやだ! 逃げたくない‼︎‼︎」
勇者は気持ちを立て直すように、柄を強く握り、声を荒げると、ストロガノフに向かって剣を振った。
しかし、その一撃はあっけなくかわされ、代わりに腹に重い一撃をくらう。
「ぐうぅ……」
勇者は腹を押さえて唸った。
「ここで、全滅したら世界は救えない‼︎‼︎ 状況を判断して、生き延びることも勇気なんだ!」
神官はダダをこねる子供を一喝するように叫ぶと、素早く純銀の槍をかかげて呪文を詠唱した。
神官を中心に魔方陣が広がり、勇者一向の体を柔らかい光が包む。
「ちくしょう! ちくしょう‼︎ 」
勇者のやりきれない気持ちが、悲痛な叫び声となってホールに響いた。
勇者一向が光とともに消える前に、じいさんが神官に向かって声を掛けた。
「クラウトよ、勇者の剣は先代勇者と魔王の決戦の地、ホイロ島にあるぞよ」
最後のひと文字を聞く前に、勇者たちは消えた。
大好きな皆様へ
いつも読んでくれてありがとうございます。
めちゃくちゃ嬉しいです。感謝しています。
体調崩したのと、仕事が忙しくなり少しだけお休みします。
完結してるので、近いうちにはまた投稿する予定です。
ちょっぴり待っててくださいませ。
よろしくお願い致します。




