#鬼、#お供
ドゴオオオォォォォオオオオーーーーン‼︎‼︎‼︎‼︎
覚悟を決めた瞬間、耳をつんざくような破壊音が聞こえた。
勇者たちが一斉に振り返り、扉を凝視する。
「お前はっ……‼︎‼︎」
破壊された扉の前にはストロガノフが立っていた。
隣には、魔界高校の前で拾ったじいさんをお供に従えている。
「アルス‼︎ オーガの片割れだ‼︎‼︎」
いち早く気が付いた神官が声を上げた。
勇者はわかっていると言わんばかりに走り出す。
「うおおおおお!!!!」
勇者はストロガノフの直前で踏み込むと、大きく跳ねて怒りを込めた一撃を頭に向かって振り下ろした。
ストロガノフは、素早く右腕を鋼鉄化して受け止めると、腕を振ってはじいた。
跳ね飛ばされた勇者は、後方で着地すると再び剣を構える。
同じくストロガノフも拳を構えて、両者が見合った状態になった。
「ス、ストロガノフ……」
我の小さな声にストロガノフが反応する。
「なっ……!」
ストロガノフの目に、大量の傷を受けて血を流したまま、ピクリとも動かないザンギと、背中に傷を負い、ブスブスと香ばしく焼き上がっている我の姿が映った。
ストロガノフの動きが止まった。
「オメェら……、俺のツレにずいぶん好き勝手してくれたみたいだな」
ストロガノフの体からどす黒い炎がゆらりと立ち上がった。
「ぶっ・殺す‼︎‼︎‼︎‼︎」
ゴオッと黒い炎を体がら放出させると、我よりも魔王らしい悪鬼の形相を浮かべた。
この場から逃げ去りたくなるような、恐怖が勇者一向を襲う。
勇者の剣先がわずかに震え出した。
圧倒された神官と魔法使いは、なすすべなくふたりを見入っている。
「ほっほっほ。まぁ、待たれい」
緊迫した空気を払うかのように、突如、じいさんがストロガノフの肩をポンっと叩いた。
「ああっ⁉ ジジィは黙ってろ!!!!」
鬼神化したストロガノフに声をかけるとはなかなかの命しらずである。
水を差されたストロガノフが、殺人鬼の顔でじいさんを睨む。
「若いもんは血の気が多いこった」
じいさんは肩をすくめて、怯えた振りをすると、神官を見つめた。
「クラウトかね。久しいのぉ」
「…………? えっ……!?」
その言葉に神官がじいさんを見る。ピタリと動きが止まった。
「…………‼︎‼︎ あっ!!!! だっ、だっ、大賢者様!?」
神官は目を真ん丸にして、すっとんきょうな声を出した。
しばらくポカンとした後、ハッとして右手を左胸に当て、敬意を表すポーズをとった。
じいさん以外、全員が戸惑っている。