#神殿、#地下室、#怪しげ
「怪しい」
山奥村のカストは、村の周辺を簡素な木の柵でグルリと囲った小さな集落。
柵の中には数十件の民家とわずかな店、あとは畑しかない。
どこからどう見ても田舎の村だ。
その中央に優雅な彫刻が施された、石造りの立派な神殿がどっしりと腰を据えている。
どう見てもしょっぼい田舎にミスマッチ。
「絶対に怪しい!」
山奥村に不釣り合いな神殿。
そして、勇者の親友は神官(インスタ調べ)。
どう考えても勇者脱出用のワープゾーンや地下室があるのは神殿だろう。
人気のない早朝の村を早足で抜け、神殿の前に立つ。
入り口前は小さな広場になっていて、床にはタイルをモザイク柄に組み合わせた、派手な装飾が施されていた。
さずが田舎者のセンスである。
非常にダサい。
「お邪魔します……」
扉を開けて侵入したが、内はごく普通の礼拝堂や懺悔室、月桂冠をかぶった女神像があるだけだった。
見落としがないように説教壇、イスの下までくまなく調べたが、これといって怪しいところはない。
「と、なると神殿の周辺か⋯⋯?」
モザイク柄の入口前広場から、神殿をグルリと周るように歩いてみる。
すると、神殿の真後ろに大きな月桂樹があった。
根元をよく見ると、一部だけ薄っすらと土の色が違う。
手のひらで何度も土を払うと、古ぼけた地下室への扉があった。
「⋯⋯クックック、ハーハッハッハ! バカな人間どもめ! 大魔王様はすべてお見通しだなのだよ!」
よし。この扉の隙間に、強力な接着剤を流し込んでやるとしよう。
こういうこともあろうかと持ってきてよかった!
勇者よ、緊急時に扉が開かず、慌てるがよい。
“ぶちゅるるる~!”
接着剤を思い切り握ったため、勢い余って屁のような下品な音が出た。
「プッ、フヒヒヒヒ!」
「あら、旅のお方ですか?」
吹き出した瞬間聞こえた、鈴のように凛とした声。
慌てて振り返る。
そこには透明感のある白い肌に、ブラウンの大きな瞳。
頬と唇を桜色に染めた美少女が、ゴールドの長い髪をふわりとなびかせて立っていた。
華奢なボディには、オフホワイトのミニドレスと、萌黄色の簡素な胸当てを纏い、編み上げブーツでほっそりとした美脚を締めあげている。
手には小柄な彼女にピッタリな、ピンクの宝石がついたミニロッドが握られていた。
彼女を目た瞬間、世界が止まったーー。