表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/93

#神殿、#地下室、#怪しげ

「怪しい」


 山奥村のカストは、村の周辺を簡素な木の柵でグルリと囲った小さな集落。

 柵の中には数十件の民家とわずかな店、あとは畑しかない。

 どこからどう見ても田舎の村だ。


 その中央に優雅な彫刻が施された、石造りの立派な神殿がどっしりと腰を据えている。

 どう見てもしょっぼい田舎にミスマッチ。


「絶対に怪しい!」


 山奥村に不釣り合いな神殿。

 そして、勇者の親友は神官(インスタ調べ)。

 

 どう考えても勇者脱出用のワープゾーンや地下室があるのは神殿だろう。



 人気のない早朝の村を早足で抜け、神殿の前に立つ。

 入り口前は小さな広場になっていて、床にはタイルをモザイク柄に組み合わせた、派手な装飾が施されていた。


 さずが田舎者のセンスである。

 非常にダサい。

 

「お邪魔します……」


 扉を開けて侵入したが、内はごく普通の礼拝堂や懺悔室、月桂冠をかぶった女神像があるだけだった。

 見落としがないように説教壇、イスの下までくまなく調べたが、これといって怪しいところはない。


「と、なると神殿の周辺か⋯⋯?」


 モザイク柄の入口前広場から、神殿をグルリと周るように歩いてみる。

 すると、神殿の真後ろに大きな月桂樹があった。

 根元をよく見ると、一部だけ薄っすらと土の色が違う。

 手のひらで何度も土を払うと、古ぼけた地下室への扉があった。


「⋯⋯クックック、ハーハッハッハ! バカな人間どもめ! 大魔王様はすべてお見通しだなのだよ!」

 

 よし。この扉の隙間に、強力な接着剤を流し込んでやるとしよう。

 こういうこともあろうかと持ってきてよかった! 


 勇者よ、緊急時に扉が開かず、慌てるがよい。

 


 “ぶちゅるるる~!”

 

 接着剤を思い切り握ったため、勢い余って屁のような下品な音が出た。


「プッ、フヒヒヒヒ!」

「あら、旅のお方ですか?」


 吹き出した瞬間聞こえた、鈴のように凛とした声。

 慌てて振り返る。

 

 そこには透明感のある白い肌に、ブラウンの大きな瞳。

 頬と唇を桜色に染めた美少女が、ゴールドの長い髪をふわりとなびかせて立っていた。


 華奢なボディには、オフホワイトのミニドレスと、萌黄色の簡素な胸当てを纏い、編み上げブーツでほっそりとした美脚を締めあげている。


 手には小柄な彼女にピッタリな、ピンクの宝石がついたミニロッドが握られていた。


 

 彼女を目た瞬間、世界が止まったーー。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ