#青鬼が現れた
「リコッタ! どこだよ‼︎‼︎ 返事しろよ‼︎」
取り乱したザンギは、リコッタのスマホを握りしめ、辺りを見回しながら大声で叫んだ。
我も魔笛兼鎌で草木をかき分けて辺りを捜索する。
「なぁ、もしかして……、誰かに連れ去られたんじゃねえのか⁉」
ザンギが最悪のケースを口にする。
確かにリコッタがミルクとラインの途中、こんなところにスマホを落とすとは思えない。
「考えたくないけど、もしそうだとしたら……、争った形跡がないから、多分、魔法を使える者の仕業だと思う……」
「ってことは、大賢者か‼︎‼︎」
「あくまで可能性だよ!」
リコッタは見た目は派手だが、頭もいいし、魔力もナイフの腕前も魔界トップクラスだ。
そんな恐ろしい女を連れ去れる奴なんて、そうそういるはずはないのだ。
「じゃあ、大賢者は今までどこかに隠れていて、俺らの様子を見張っていたっていうのかよ‼︎ つーか、なんでリコッタをさらったんだよ?」
「そんなこと言われても、我だってわからないよ!」
思わず大声で怒鳴り返す。
そのとき、深夜、屋敷内で物音がしたことを思い出した。
「いま、我らが言い争っても意味ないよ。とりあえず、屋敷に戻ってみよう。見つけられなかった隠し部屋に、リコッタが監禁されているのかもしれない」
我の話を最後まで聞く前に、ザンギは猛獣のように駆け出した。
必死で追いかけたが、追いつけるわけもなく、我が屋敷に着いた頃には、怒りにかられたザンギがホールで怒鳴っていた。
「大賢者ああああ‼︎‼︎ いい加減出てこいってんだよ‼︎‼︎‼︎‼︎」
怒りと切実な声が館に響く。
しかし、どんなに叫んでも一向に大賢者の現れる気配はない。
「ゾーラぁああ‼︎‼︎ オメェ、一旦、魔界に戻ってリコッタを探してこい! 俺はこのカラクリ屋敷を破壊してリコッタを見つけ出す‼︎‼︎」
「そっ、そんな……。いくらザンギでも無茶だよ。それに、もうすぐ勇者が来ちゃうかも……」
ドガッ‼︎‼︎
壁を殴り、我の言葉を遮る。
「いいから、探して来いってつってんだよ‼︎‼︎」
「わっ、わかった……」
パラパラと落ちる壁の破片の中、青い炎に包まれた鬼を見た。




