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#カラクリ屋敷

 勇者は明日、カラクリ屋敷に到着予定だ。


「今回はタイマンゆえに、よけいな計画は立てないが、カラクリが施されている可能性があるから、立地や建物の構造を知っておいたほうが良いと思う」


朝イチでザンギの家へ行き、挨拶もそこそこに前乗りを交渉する。

 

「はぁ? ヤダよ、めんどくせぇ」

「そんなこと言わないで。地の利を活かしたら戦いに有利だし、それに、もし大賢者がすごく強い奴で、タイマンの邪魔してきたらやっかいだよ」


 我、必死の説得。


「ん〜……」


 寝ぼけまたこのザンギが考え始めた。


「まぁ、部外者にケンカの邪魔されるのも面倒だしな……。じゃあ、これからカラクリ屋敷に行って、勇者が来る前に、大賢者をぶっ飛ばすとするか」


 ザンギがあくびしながら準備を始める。


(しめしめ、ザンギが単純でよかった)


 前もって大賢者をやっつけておけば、万が一、ザンギが勇者に負けても、勇者の剣の在りかは永久にわからず仕舞い。


 それに、前乗りしておけば、我の隠れる場所も探せるというものだ。ザンギには申し訳ないが、一緒にいたらトルテちゃんに敵同士ということがバレてしまうからな。


「よし、行くか。どこにあんだよ」

「カラクリ屋敷は魔界と人間界を繋ぐ、空間の割れ目の近くにあるみたい。まずはそこを目指そう」


 準備が整ったザンギと、早々に出発する。

 

 カラクリ屋敷は年中霧がかっている深い森の、泉のほとりに佇んでいた。


「すげーな、彫刻の森じゃねーか!」


 ザンギが小学生並の感想を述べる。

 しかし、あながち間違えてない。


 屋敷は巨大な木材を何層にも積み上げたドーム状なっていて、てっぺんにはドワーフの象徴である斧のモチーフが飾ってあった。

 複雑な木の重なり合いが立体感や歪みを演出している。


 屋敷周辺には、価値の高そうな彫刻やなにをモチーフにしたかわからない像が至る所にあった。


「なんか…、すごいね」


 圧倒された我とザンギは、キョロキョロしながら屋敷の入口に立つ。

しかし、扉と思われる部分には、様々な種類の材木を組み合わせた模様があるだけ。

 ドアノブすらなかった。


「カラクリ屋敷だ。入口を間違ったのかもしれないな」


 頷くザンギとともに、屋敷の周りをぐるりと一周する。

 しかし、入口らしきものは見つからない。


「んだよ、入れないじゃねーか!」


 しびれを切らしたザンギが、扉を殴るがビクともしない。

 我も解除の呪文を唱えてみるが、ウンともスンとも言わなかった。


「これ、カラクリじゃね? どうやって開けるんだよ」


 ザンギが聞いてくるが、我にわかるはずもない。

 魔界高校のバカふたり。

 しょっぱなのカラクリすら解けやしない。


「仕方ない。一旦、魔界に戻って、我らより頭のいいやつを連れてこよう」


 気が乗らないが、リコッタにお願いするとしよう。

 今回の決戦場は、魔界と目と鼻の先なのが不幸中の幸いだ。

 大賢者や勇者が出入りする可能性もあるので、ザンギに待機をお願いする。


 しかし、前乗りしておいてよかった。


 これも、経験のたまものだ。


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