#息止めチャレンジ
「ゴガガガ、ブクブクブク」
濁流に飲まれる木の葉のように体が押し流される。
水圧に抗うように目を開けると、トルテちゃんの小さな体が水中を舞っていた。気絶してしまったのだろう。
「グググッ、ゴガッ」
我は必死でもがきながら、トルテちゃんのか細い腕を捕まえると、体を引き寄せて胸にしっかりと抱いた。
ドガッッ!
壁や岩に体を打ち付けるたび、気が飛びそうになる。
だが、この腕を離すわけにはいかない。
トルテちゃんを傷つけてはならないのだ。
「ブゴッ、ゴボゴボ……」
しかし、頑張ってこらえているが非常に苦しい。
息も意識も限界だ。
我の口から空気が漏れた瞬間、目の前が真っ白になり、凄まじい水圧とともに、体が宙に放り出された。
ドーーーーーン‼︎‼︎
「ここは……?」
ふわっと高く浮遊しながら、視界に入ったのは、大量の水と人間を吐き出した噴水を凝視するガーデンパーティの参加者たちだった。
「庭園かああぁぁああああ‼︎‼︎‼︎ グフゥ‼︎‼︎」
絶叫とともに、我の体は地面にしこたま叩きつけられた。
「グッフゥウウーーー‼︎‼︎‼︎」
続いてトルテちゃんが我の腹の上に降ってきた。
内臓が口から飛び出るほどの衝撃。
しかし、我はトルテちゃん専属のナイト。このくらいはなんともない。
いや、嘘。
マジで泣きそうなほど痛い。
でも、トルテちゃんを受け止められたので良しとしよう。
ドドドドド……‼︎‼︎
噴水は大きな音とともに水柱を立ち上げていた。
パニックを起こしたパーティの参加者たちは皆、逃げ惑っている。
「トルテ! 大丈夫ですか⁉」
人ごみをかき分けながら神官が駆け寄ってくる。
ぐったりしたトルテちゃんの首筋に手を当てると脈を確認した。
「気絶しているようですね」
そういうと、両手で純銀の槍を持ち、神に祈りをささげ始めた。
神官の手から温かい光が溢れる。
光は丸い玉になると、トルテちゃんの胸元でポンと弾けて、溶け込むようになじんた。
しばらくすると、トルテちゃんの頬と唇に赤みが差す。まぶたがピクリと反応し、指先が動いた。
「う、ううん……」
「良かった、気がついて。ケガはありませんか」
神官が優しく問いかける。
その役、我がやろうとしたのに何、横取りしているの?
文句を言いたかったが、背中が痛すぎて声が出ず、ただ口をパクパクさせていた。
「はっ、クラウト! 大変なの! テニース国が、国王が……!」
意識を取り戻したトルテちゃんが、まだ回らない頭で必死に神官に訴える。
神官はトルテちゃんの上体を優しく支えると、法衣からマントを外して彼女の肩にそっとかけた。
「どうしたあああ!? 何事だぁっ‼︎」
遠くから、やたら張り切っている声が聞こえる。
嫌な予感がしつつ、顔を上げると、案の定息を切らした勇者が駆け寄ってきた。
ヤツの後ろには、ちょっとだけ服が乱れたリコッタもいる。




