#勇者、#お楽しみ中
一方、国王の部屋では――。
バルコニーに繋がる大きな窓から吹かれた夜風が、レースカーテンをゆるやかになびかせる。
砂漠の夜空にぽっかりと浮かんだ満月が、部屋にいる男女のシルエットを艶かしく映し出していた。
「あぁ………」
「んっ。ふふふ……」
密やかに聞こえる、吐息と衣擦れの音。
リコッタはアルスの首にゆっくりと絡みつくと、半開きになったピンク色の唇で口付けをした。
アルスは少しだけ驚いた顔をした後、目を閉じて受け入れると、遠慮しながらもリコッタの華奢な腰に手を回した。
部屋には甘く官能的な香りが満ちている。
「もっと。もっと強く抱きしめて」
リコッタがアルスの耳元で甘く呟く。
酒と色香によってのぼせたアルスは、言われるがまま腕を強く締め、リコッタのか細い腰を引き寄せた。
二人の体が完全に密着する。
「リコッタさん……」
「いや。リコッタって呼んで。アルス」
小さく、照れたように名前を呼ぶ声が聞こえると、リコッタは満足気に微笑んだ。
「座って」
アルスをベッドに座らせると、両足をまたぐようにして対面に座る。
「初めてなの?」
アルスの肩に両手を置き、顔をしっかりと見つめる。
アルスは顔を赤くして目を反らしたあと、小さくうなずいた。
「可愛い。私に任せて」
リコッタの細い指がドレスの肩紐にかかる。
スルッ。
滑らかな音が聞こえた。
同時に薄暗い部屋に真っ白い肌が浮かびあがる。
逆光でもわかる、手の平には収まらないほどの大きなバストと、折れそうなほどくびれたウエスト。
アルスは思わず息を飲んだ。
「さぁ、一緒に気持ちよくなりましょう」
リコッタは妖艶な微笑みを浮かべながら、成熟した体をアルスに向かってゆっくりと倒す。
「リコッタ……」
アルスがギュッと強く目を閉じる。
「うっ……、だっ……、だっ、ダメだ‼︎」
倒れ込んでくるリコッタの肩を両手で押さえ、理性を呼び戻すように必死で制する。
予想外の行動と答えに、リコッタは動きを止める。
「どうして? あなたが欲しい」
怪訝な表情でアルスを見つめる。アルスは真っ直ぐな瞳でリコッタを見つめ返す。
「もっと、ちゃんとリコッタのことを知りたい。そのうえで、関係を築きたいんだ。上手く言えないけど、リコッタのことを人として大事にしたいから、酔った勢いで、こんなことしたくない。恥かかせてごめん……」
必死で思いを伝えようとするアルスの表情から、その気持ちが嘘ではないことが分かった。
リコッタの胸にじゅんっと熱いものがこみ上げる。
「アルス……」
ドドドドド……ドーーーーーーン‼︎‼︎
リコッタが少女のように呟いたそのとき、ものすごい地響きとともに、庭園から大きな音がした。




