#夢見る、#デート
「宴会の最中、途中で抜け出します。城門の前で待っているので、来てくださいね」
デートの約束がある。
それだけで、大声で叫びたいほど、体中にエネルギーが満ちてくる。
「くうぅ〜っ……! 早くトルテちゃんに会いたい‼︎」
そして、夢のようにロマンティックひとときを過ごすのだ。
ふたりの時間をスペシャルなものにするために、さっさと勇者を酒に酔わせて、リコッタにとどめを刺してもらおう。
今までも本気だったが、今回はやる気が違う。
モチベーションとは非常に大切なものだな。
「ミルクはここで待機していて」
昨日の失敗を踏まえて、ミルクを空き部屋に閉じ込めておくことにした。
ピザやコーラなどハイカロリー食料に加え、イケメンの写真集や乙女ゲームも揃えたので、エンターテインメントに富んだ時間を過ごせるだろう。
念を入れて、扉の前にはデーモンを配置。
これで、今回は宴に現れることはないだろう。
「もう、こんな時間か……」
ミルク対策に勤しんでいたら、あっという間に日が落ちていた。慌てて黒服にチェンジする。
「さあ! 今宵も宴の始まりじゃあ!」
国王の声とともに宴がスタートする。
昨日とは嗜好を変えて、本日はガーデンパーティだ。
庭園にある噴水を囲むように、テーブルやイスを並べて、フェスティバルのような空間を演出した。
色とりどりのガーランドがお祭り気分を盛り上げる。
周囲を囲むフードカートには、世界中のご馳走がズラリ。
「ククク、我ながら素晴らしいイベンター能力だ」
勇者、今日こそ本当に最後の晩餐だ。
我のおもてなしを楽しむがよい。
勇者一向は、見晴らしの良い席でシャンパン片手にテニース国王と歓談していた。
「今日も素晴らしい宴ですね」
などと、社交辞令を口にレセプションパーティに来ている業界人を気取ってやがる。
腹が立つので、本日もグイグイ飲ませよう。
昨日と同じく、我は小忙しい素振りをしながら、トレイを片手に勇者たちの様子を探る。
キャバ嬢たちにあおられて、勇者の顔がゆでダコのように赤くなったら酔いが回ったら合図だ。
リコッタに目配せして勇者の隣に座らせる。
ループしているようで少し笑った。
リコッタは勇者と神官、トルテちゃんと歓談した後、勇者だけにこそっと耳打ちする。
しばらくすると、勇者はリコッタとともに姿を消した。
「ククク…、お楽しみの始まりだな。勇者よ、リコッタの体をあますことなく堪能するがよい」
童貞勇者に我からのプレゼントである。
今宵、絶頂とともに絶命を迎えるがよい。
翌朝、勇者がスッポンポンで発見されるが楽しみだ。
トルテちゃんもさぞドン引きするだろう。
想像したら、笑いが抑えきれなかったので、トレイを使って口元を隠した。




