#寝ぼけまなこ、#おっぱい
「ゾーラさん……、ゾーラさん……」
鈴が鳴る声が聞こえる。
薄っすらと目を開けると、我の左頬の下には、蜜をたっぷり含んだ桃みたいなおっぱいがあった。
どうやら夢を見ているようだ。
ならば、このおっぱいに顔をうずめてしまおう……。
桃の割れ目のような谷間に顔を近づける。
「キャッ!」
突然、小さな声が聞こえた。
「あっ、あれ……?」
驚いて顔を上げる。
「あ、あ、えええええ⁉︎ ト、ト、トルテちゃん‼︎‼︎‼︎」
どうやら我は、居眠りしていたうえに、トルテちゃんにもたれかかっていたようだ。
「ごっ、ごめん‼︎ 本当にごめん‼︎ 寝ぼけてて……」
すさまじく動揺しながら無礼を詫びる。
トルテちゃんは我の顔を見ると、くすっと笑った。
「ふふっ、大丈夫ですよ。ゾーラさんの後ろ姿が見えたから隣に座ったんです。でも、あまり気持ちよさそうに眠っていたから、そのままにしていました」
「あの、どれくらいもたれかかってた? 重かったよね。本当にごめん」
「10分くらいですかね。もう、気にしないで」
なんという女神。
魔界高校の女子に同じことをしたら、三年間『キモい』と後ろ指刺されただろう。
女神から許しを得たことで、ようやく動揺がおさまり、少しずつ会話が始まった。
最初は世間話。
それから徐々に勇者の盾の話になった。
「一刻も早く、旅を進めたいのですが、宴会が終わるまで継承できないと言われて……」
「へぇ~、そうなんだ~」
首謀者は我だ。
もちろん知っているが、あたかも始めて知った演技をする。
「テニース国にそんな習わしはないし、それに、頑なに盾を見せてもらえなかったんです」
トルテちゃんの顔から笑顔が消えた。
顔を俯かせ、ヒザに置いた手をじっと見つめている。
「じつは……、ジョナ村にいるときに、身なりの良い男性が『国王がご乱心だ。悪魔に盾を捧げてしまった』と、神殿に駆け込んできたんです。神官たちがテニース城に確認をとったところ、何事もなかったようなので、男性は帰されたみたいなのですが」
大臣だ。胸が早鐘のように打った。
リコッタを襲う前に、ジョナ村に駆け込んでいたとは……。
牢に閉じ込めたことは大正解だったようだな。
「いま、テニース城で異変が起こっている。勇者の盾も隠されている気がするんです!」
そう言うと、トルテちゃんは我の方に体を向け、両手をギュッと握った。
「ゾーラさん、お願いです! 私と、勇者の盾探しに、付き合ってくれませんか?」
握られた手の強さに驚き、彼女を見つめ返す。
頭の中に、先ほどのセリフがリフレインした。
『ゾーラさん。お願いです! 私と……付き合ってくれませんか?』
考える前に、体が勝手に頷いていた。




