#終わらない、#パーティ
「勇者の盾を継承できないって、一体、どういうことですか!?」
謁見の間に勇者の声が響く。
その声は明らかに動揺していた。
神官とトルテちゃんは驚いた表情で、互いに顔を見合わせている。
「そりゃあ、まだ宴会が終わっとらんからのう」
国王は立派な口ひげを指でもてあそびながら、のらりくらりと答える。
「勇者が訪問したら、連日連夜宴会を続けるのが、テニース国の掟じゃ。勇者の盾は宴が終わった後に継承する。先代勇者も同じようにもてなしたというのに。アルス、貴様は我が国の歓迎を受けられないとでも申すのか?」
「いえ、そういう訳では……」
語尾を強めると、ギロリとアルスを一瞥した。
態度は無精たらしいが、その言葉には有無を言わさぬ迫力があった。
ていうか、我が適当に作った掟なのだが、国王が言うとそれっぽく聞こえるかスゴイ。
「宴はどれくらい続くのでしょうか? 魔王討伐のため、先を急ぎたいのですが……」
「そんなの決まっておらん。『ワシの気が済むまで』じゃ」
正しく言えば、勇者抹殺が終了するまでだ。
勇者が困惑した表情を浮かべる。
「では、ひと目で良いので、勇者の盾をこの目に刻ませていただけませんか?」
勇者が首を垂れて嘆願する。
神官もトルテちゃんもそれに従って頭を下げた。
「なぜ、そんなことをする必要があるのだ? 宴が終わったら、継承するといっただろう。はやる気持ちもわかるが、いまは楽しむことだな」
国王は鼻で笑うと、席を立ってマントを翻した。
さすが国王、誤魔化し方が秀逸だ。
「なんでだよ!」
謁見の間を後にした勇者が不満を漏らす。
明らかにイラついている勇者を、神官が必死でなだめている。
勇者は周囲に側近らがいないことを確認すると、仲間たちにひそひそ話を始めた。
きっと、国王の文句でも言っているのだろう。
「少し、散歩でもするか」
勇者がカリカリしている姿を見て、気分が良くなった我は、宴の前に城の庭園を歩くことにした。
今までずっと気を張っていた。たまにはリフレッシュも必要である。
庭園の中央にはオアシスから水を引いている噴水があり、周辺にはヤシの木やサボテン、亜熱帯の植物が並んでいた。
色鮮やかな南国の花が彩りを添え、甘酸っぱい香りを漂わせている。
ここまで水と植物があるのは、砂漠でここだけだろう。贅沢な庭だ。
チュンチュ、さあああ。
石畳を進み、噴水の縁に腰かける。
涼しげな風が髪をなでる。花の香りを体に閉じ込めるようにゆっくりと深呼吸。目を閉じると鳥のさえずりと噴水の音が聞こえてきた。
「ああ、気持ちいいな」
張っていた気持ちが少しずつほぐれていく。
ふわっと訪れた眠りに、抗うことなく体を委ねた。




