#再会、#ロマンティック
「ククク⋯⋯、良いカンジだ!」
ゲストに飲み物を配る振りをしながら、勇者とリコッタの様子を伺う。
かなり。いや、相当いい雰囲気だ!
最後まで見届けたいが、現在、我はふたりの前を5往復している。これ以上、ウロウロするとバレる危険があるので、残念ながら、この場はリコッタに任せるとしよう。
「わはははは!」
「いや〜ん、すご〜い♡」
酒宴は盛り上がり、至るところでおっさんの笑い声と女のヨイショする声が聞こえる。
会場は食べ物、酒、キャバ嬢の香水にオヤジの加齢臭と、様々な匂いと欲望が入り混じり、シラフではこの場に居るだけで悪酔いしてしまいそうだった。
「一旦、バルコニーに出て、新鮮な空気でも吸いに行くとするか⋯⋯」
パーティルームの隅にある、バルコニーへの扉を開けると、涼しげな夜風がビュウっと頰を撫でた。不純な空気を払うようで心地よい。
目を閉じて風が体を吹き抜けるのを感じた。
再び、目を開けると、空に浮かぶ月と同じ色をした長い髪。暗闇に浮かぶ純白のミニドレス。小柄ながらメリハリのあるボディにスラリと伸びた脚。
見覚えのある先客がいた。
「ト、トルテちゃん⋯⋯」
思わず口をついて出る。先客が振り返った。
「⋯⋯⋯⋯? あっ、 旅のお方! 無事だったんですね! よかった。あの後、探したんですよ。また会えて本当に嬉しいです」
我に気が付いたトルテちゃんは、ほっとしたような表情を浮かべた。
「えっと、名前。まだ聞いてなかったですよね?」
「あっ、ゾ、ゾーラです」
「ゾーラさん、ですね」
天使のように可愛らしい女の子が我の名を呼ぶ。
それだけで、胸に熱いものがこみ上げた。
「よかった、知り合いがいて。私、場違いな気がして、ここでひとり星を眺めていたんです。あの、ご迷惑じゃなかったら、少し私とお話ししませんか?」
「あっ、は、はい」
冷静を装いつつも、胸は大和太鼓が怒涛のリズムを奏でている。
トルテちゃんに促されて隣に並び、バルコニーの手摺りに両腕をかけると、ふたりのシルエットが地面に映し出された。
ああ、なんてロマンティックなシチュエーションだろう。
ココに来て良かった!




