#魔界No.1、#キャバ嬢
思い立ったが吉日。
ハニートラップ計画を実現するために、魔界歌舞伎町NO.1キャバ嬢をスカウトに行くことにした。
魔界歌舞伎町は、魔界の中央にある、魔界城の真後ろにある一帯を差す。
飲み屋やカジノ、さらにはちょっとエッチなサービスをする怪しげな店が立ち並ぶ、男のお楽しみスポットだ。
「お兄さん寄ってかない? いい子いるよ!」
メイン通りに入った瞬間、キャッチが擦り寄ってくる。
ぼったくりは日常茶飯事なので甘い言葉にはのらない。
華麗にスルーしながら数分歩くと、いかがわしい魔界歌舞伎町でもひと際目立つ、ドギツイピンクと紫で城をイメージした店にたどり着いた。
『blood』
シャレた英字で、看板が掲げられているその店が本日の目的地。
重厚な扉を開くと、黒服に身を包んだいかついデーモンが現れる。
「いらっしゃいませ。ご指名は?」
「あっ、あの。No,1を⋯⋯⋯⋯」
雰囲気に押されて軽くキョドる。
いかがわしい外観とは異なり、店内はモノトーンを基調にしたモードな雰囲気だ。
金持ちそうなIT系魔族が、隣に美女をはべらせて高級そうな酒をあおっている。
「座るだけで5万オカネーか⋯⋯⋯⋯。さすが高級店だな」
こうしている間にも金がかかるので手短に済ませたい。
セット料金に含まれている、血のワインを飲みながらNO.1を待つ。
財布に現金とカードが入っているのを何度も確認した。
「こんにちは〜」
途中、本日入店したという、トロールの新人キャバ嬢が我の隣に着く。
樽のような巨漢に金髪ロングという地獄の組み合わせ。
髪には花飾りをつけ、おしゃれ心を演出している。
顔には三日月を並べたような目がふたつと、顔半分を占める分厚い唇がついていた。
トロールは我に断りも入れずにフードを大量オーダー。さらに、
「ウチ、退屈~。なんか面白い話して~」
とほざいた。
店に入ってから2時間。いまだNO.1は我の席につかない。
トロールの恋バナに相槌を打つのも限界だ。
「あの、そろそろチェック⋯⋯⋯⋯」
しびれを切らして、帰ろうとしたとき、
「お待たせしました。サキュバスのリコッタ・チーズです。ご指名ありがとうございます」
魔界歌舞伎町NO.1キャバ嬢のおでました。




