#隠しきれない、#気持ち
「てか、オメェどこにいたの?」
魔王城に帰った我を待っていたのは、ストロガノフとザンギだった。
村人たちと一緒に逃げたなんて口が裂けても言えやしない。腹の調子が悪くなったと誤魔化した。
「マジ、使えねえ」
吐き捨てられた上に、バイト代10万に目の治療費として、20万オカネーを請求された。
今月は節約するとしよう。
「それにしても、今回の勇者討伐は大失敗であった⋯⋯⋯⋯」
何ひとつ計画通りに進まなかった。
次は不測の事態にも対応できるような計画を立てねばなるまい。
そのためには、再度情報収集だ。
#勇者、#アルス
フリック入力して勇者のインスタを覗く。すると、昨日のことがアップされていた。
“ピンチ脱出!”と、タグ付けされた写真を見る。
仲間に囲まれて、爽やかな笑顔を浮かべる勇者が写っていた。
その隅っこには、魔笛兼鎌を握った我が写り込んでいる。
速やかに不適切なコンテンツとして報告した。
もう一枚、“仲間”とタグ付けされた写真を見る。
そこには、勇者、神官、そしてトルテちゃんが映っていた。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯!」
トルテちゃんを見た瞬間、胸がザワつき、鼓動が早くなる。
あの日からトルテちゃんのことが頭から離れない。
何度も何度も彼女のことを思い出す。
薄々気付いていたが、これはもしや⋯⋯⋯⋯?
⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「こっ、恋⋯⋯⋯⋯⁉︎」
意識した瞬間、胸が大和太鼓のごとく熱い鼓動を打つ。
ああ、そうだ。やっぱり我は彼女のことが気になっているのだ。
生まれて初めて、恋をしてしまったのだ。




