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ショ―ちゃんが奴らに捕まったという情報は常に奴らの動向を監視して
いたナオちゃんによりお昼前には僕たちの耳に届いていた。
もう一刻の猶予も許さない状況にまで追い詰められた僕たちはショ―ちゃん
救出作戦を必死に模索するも、腕力だけでなく身勝手で悪知恵働く奴らに
対し圧倒的不利な状況にしばらくの間沈黙が続いた。
この村の長であるショ―ちゃんの命も危ぶまれる上に、この先奴らに
村の財産を奪われ続け、秩序までも壊されかねない状況を打破するには
あの作戦しかないと腹を括った僕は沈黙を破りみんなを前に話始めた。
「ちょっと、みんなに聞いてほしいんだけど」
「えっ、何々、ソラちゃん何かいい作戦思いついたの?」と皆が一斉に
注目した。
「僕が奴ら3人をなんとか騙して特区に連れて行こうと思うんだ」
「えっ、そんな事して何の意味があるの?」とリカちゃんが首を傾げた。
「そうよ、奴らのことだからすぐループラインで戻ってくるわよ」と
ナオちゃんが呆れた表情を浮かべるとひながかなり焦った様子で僕の腕を
引っ張りしきりに首を横に振る仕草を見せた。
「しょうがないよ、ひな」と掴んだひなの手をそっと放しにかかると、
「絶対ダメよっ!」と珍しく彼女は目を吊り上げた。
「何、コソコソ2人話してるのよ」とリカちゃんが不思議がるとひなが
僕の真意を不本意な表情で話し始めた。
「そらちゃんはループラインの廃線を利用して奴らを特区に封じ込め、
2度とこの村に侵入させないつもりなのよ」
「えっ、ループラインって廃線になるの?」とキョトンとした表情を
見せる2人にひなは更に続けた。
「そう、何十年も先なんだけどね」
「えっ、それじゃ~ 今特区に行っても意味ないじゃん」と同時にため息を
吐く2人に僕がひなに代わって説明した。
「僕は何度もループラインを利用しているヘビーユーザーだからそれに
伴うペナルティーも重いんだ。だから今回の利用で確実に僕は廃線以降の
時代に生きる事なるはずだよ」
「じゃ~ ソラちゃんも奴ら同様戻って来れないって事」と不安げな
リカちゃんに僕は黙って頷いた。
「え――っ! イヤよそんなの。他の作戦にしましょ!」と彼女たち3人
は円陣を組み作戦会議が再開すると奥から未だ体調がすぐれないミカちゃん
がこちらに向かって歩いて来た。
「何騒いでるのよ、まったく~」
「あっ、ミカちゃん体調はどう?」
「うん、だいぶ良くなったかな~って!」
「じゃ~アンタも参加しなさい! ショ―ちゃんが今大変なんだから」
その後しばらくの間、彼女らが中心となり活発な議論が交わされたが
残念ながら結論に至らず、しびれを切らした僕は半ば強引に彼女らを
説得し、僕の作戦を試すことに合意してもらった。
スネた表情を浮かべ僕に背を向けるひなをよそに作戦の経緯及び注意点
を説明することにした。
まず僕がソラだってことがばれないよう各自発言に気を付ける事に
加え、仮に上手く奴らを騙しループラインに乗り込む事に成功した際、
直ちに駅の出入り口を板や石などを使って完全に封鎖する旨をみんなに
強くお願いした。
ショ―ちゃんの安否が気になり居ても立っても居られない僕は同行を
希望する彼女たちをなんとか説得し、単身丸腰のまま奴らがたむろする
洞窟へと向かった。




