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僕はショ―ちゃんとユミさんを一時的にひなの家にかくまう事に決め、
その夜ショ―ちゃんからあの男との経緯を事細かに聞き出し、怪しまれ
ないようイントネーション等彼から徹底的に演技指導を受けた。
明くる日、僕は例の洞窟でリクと名乗る男と2人っきりで話し合う事
には成功したが、予想通り奴に理屈や道理が通用するはずもなく、結果
不発に終わった報告をするためショ―ちゃんを土手に呼び出した。
「ソラちゃん、どうだった?」
「残念ながら相手にもされなかったよ」
「やっぱりな」と彼は深いため息を吐き、その場にしゃがみ込んだ。
「村を出る条件としてキミが見つけたレアストーンは村として全て放棄
するからって言ったら急にあの男、顔色変えて怒り出しちゃうんだもん、
ホント焦ったよ」と僕もその場に腰を下ろした。
「オレが見つけた洞窟なんだから最初からオレのもんだ! とか言われ
たんじゃない?」と呆れた表情を浮かべる彼に僕は無言で頷いた。
「まさにそうなんだよ」とあっさりと見透かされ、これ以上自身の無力さ
を露呈したくない僕はしれっと話題を変えてみた。
「ところでユミっていう女性との関係はどうなったの?」
「うん、レイちゃんとは上手くいってるよ」
「ははっ、ショ―ちゃんにとって彼女はレイちゃんなんだ」
「そうだよ、悪い?」
「あっ、いや、でもよく元の関係に戻れたなって……」
「そりゃ、騙されたって分かった時は相当ショックだったよ。でも
彼女のおかげでミカちゃんを助けられたしね。今になって思えば謎の
怪文書解読ってかなりムリな設定だよな。それに彼女、謝罪と村の被害
を最小限に食い止める為すぐさまこの村に移住して来たらしいんだ。
みんなの前で誠心誠意謝罪する彼女を見てるとなんだかジーンと来ちゃって
さ、それまでのことはもうどうでもよくなったんだ。ヒトは誰でも間違う
ことがあると思うんだ。けどその後逃げないで誠実に対処する姿勢が大切
なんだなって思ったんだけど……、大人のソラちゃんから見てどう?」
と彼は伏し目がちに問いかけた。
「そうだよ、ショ―ちゃんの言う通りだよ。迷惑を掛けたら素直に謝る、
実にシンプルなことだよ。でも大人になるとプライドが邪魔するのか
中々素直になれないのも事実だけどね。僕も肝に銘じるよ」
「やっぱそうだよね~ だから今回の件が落ち着いたら集会を開いて
全ての経緯を正直に話そうと思うんだ。村長として自覚が足りなかった
事も含めて」
「それがいいよ、ショ―ちゃんらしくってさ! でもその前に奴らを
追い出す方法を考えなきゃな。奴ら他の洞窟も探索するって言ってた
から」と話すとショ―ちゃんの表情が一変した。
「どうかした?」
「あの男、他も探すって言ったの?」
「うん、まだまだこの村にはお宝が眠ってるはずだってさ」
僕の最後の言葉に対し明らに動揺を隠せないショ―ちゃんは
「ソラちゃん、そろそろ帰ろっか。奴らに見つかると大変だし」
と強引に会話を切り上げ共に家路に向かったが、その後の彼の
単独行動がまさに波乱の幕開けとなった。




