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ループラインの軌跡 パート2  作者: リノ バークレー
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23-3(62)

 詳しい経緯を聞くため彼女を抱き抱え、とりあえず彼女と共にお店に

入ったが、挨拶もなしにいきなり先ほど同様涙ながら地面に跪づき何度も

何度も謝罪を繰り返す彼女に周りは当然ながらザワついた。

 そんな重い空気に耐えられなくなったのかリカちゃんが困った様子で

僕に近づき耳元でそっと囁いた。


「ショ―ちゃん、一体誰なの?」

「彼女、特区でお世話になったレイちゃん」

「で、どうして彼女、私たちに謝ってるのよ?」

「それは……」と僕が返答に困っていると彼女はゆっくり頭を上げ、

申し訳なさそうに話し始めた。


「ごめんなさい、今からこれまでの経緯を正直にお話させて頂きます。

 ……私の名前はユミ、クラブではレイと呼ばれていました。私は旅行が

趣味でこれまで色んな町や村を訪れました。科学が進んでいる町あると

ウワサを聞けば長期休暇を取りその場所を訪れ、更に新薬が開発されたと

なれば自らが被験者となり特区を訪れたりと、とにかく人一倍強い好奇心が

私を旅へと向かわせたのです。ところがある町で私は何の理由もなく突如

監禁され、とあるクラブで強制労働を強いられたのです。そんな自由のない

地獄のような毎日を送る傍ら突然ある男から新たな仕事を依頼されたんです。

それは7番村の男性からレアストーンの採掘場所を聞き出すという内容で

……」

「ちょっと待って、それってもしかしてショ―ちゃんのこと?」

「そうよ、彼から場所を聞き出せば監禁生活から解放してやるって」

「それでアンタ、ショ―ちゃんに近づいたって事?」

「本当にごめんなさい」

「ごめんなさいじゃないわよ! アンタのせいでこの村のレアストーン

全部奴らに奪われたのよ! 奴らのことだからまた別の採掘場所を

探すだろうし、もしかするとずっと村に居座り続けるかも!」「アンタ、

どれだけ村に迷惑掛けてんのか分かってんの!」 

「ショ―ちゃん、そこどいて!」 

 

 憤慨したリカちゃんは僕の制止を払いのけ、彼女の腕を取り無理やり

追い出そうとすると奥からミカちゃんが飛び出して来た!


「ヤメて――!」

「もう止めて、リカちゃん」


「どうしたの、アンタは寝てなきゃダメじゃないの!」


 ミカちゃんは地面に両手を付きうなだれる彼女にまるで覆い被さるよう

に抱きつき涙ながら大声で訴えた。


「ユミねえちゃんは何も悪くないわ、何も悪くないじゃない!」 

「悪いのは監禁した奴らじゃない!」

「ワタシだってきっとおねえちゃんと同じ事したと思うわ。だってワタシ

には分かるの、ユミねえちゃんがどれだけ辛い思いをしたのか、ワタシ

には分かるのよ―っ!」と涙ながら必死にかばう彼女の迫力にさすがの

リカちゃんも圧倒され掴んた彼女の腕を放した。

 ミカちゃんは俯く彼女の正面に回り込むと先ほどとは打って変わった

柔らかいトーンで彼女に話し掛けた。

「ユミねえちゃんにもう一度会えるなんて……そうだ、お礼言わなきゃ。

ありがとう、おねえちゃん」と目に涙をいっぱいに浮かべ、まるで甘える

ような仕草でお礼を言い続ける様子を目の当たりにした僕はその瞬間

不思議とレイちゃんから受けた心のダメージが一気に癒えゆくのを感じた。

 村人達に迷惑を掛けてしまった事に対し真摯に向き合い、皆の前で

懸命に許しを請う誠実な彼女の姿に僕だけでなくここにいる全員の彼女に

対する見方が変化したに違いない。

 それはリカちゃんも例外ではなく、感情的に彼女を責め立てた事を反省

し笑顔で2人に寄り添ってる姿が全てを物語っていた。

 そして全ての元凶である奴らをこの村から追い出そうという機運がお店

全体に広がり始めるとソラちゃんが堰を切ったように立ち上がった。


「ショ―ちゃん、あのリクってどんな奴なの?」

「自分の欲求を満たすためだったら何だってするし、平気でウソも付く

ズル賢い奴さ。ソラちゃん、何かいい作戦思いついたの?」

「いや今のところ何も……でも、とりあえず正攻法で攻めようと思うんだ。

後は出たとこ勝負って感じかな」

「まずは僕たちらしく直球勝負ってとこか」と腕捲りし始める僕に

ソラちゃんは呆れた表情を浮かべた。

「ショ―ちゃん、何言ってんの。ショ―ちゃんはお留守番」

「ええぇ――!」

「ええぇ――ってショ―ちゃんは国際手配犯のマジシャンなんだろ。

奴らに見つかりでもしたら確実に名もない町で強制労働か拷問だよ」

「じゃ~ どうすればいいんだよ」

「僕がショ―ちゃん演じるよ!」

「えっ、ソラちゃんがボクを?」

「そうだよ。幸いマジシャンがショ―ちゃんだってことバレてないんだ

から僕がショ―ちゃん演じても特に問題ないよ。しかもどのみち特区で

姿形が変わるんだからさ」

「あっ、そっか!」

「みんな~ 今日から僕ショ―タだよ、よろしくねっ!」


(よ、よろしくねって……女子かよ)


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