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―うさぎクラブにて―
「やぁ、久しぶり!」
「えっ……、もしかしてソラちゃん?」
「うん、帰って来たよ!」と軽く手を振る彼にリカちゃん、リンちゃん
は一斉に飛びついた。
まさにサプライズな出会いに加え、懐かしさや以前とほとんど変わらぬ
彼の登場は2人にとって感動以外の何ものでもなく、ひなちゃんをはじめ
姿形が完全に変わってしまった僕たち2人はとりあえず傍観する他なかった。
彼女たちの興奮が一旦収まった頃、リカちゃんがソラちゃんの側で笑顔
を見せるひなちゃんに優しく声を掛けた。
「こんにちは! 私、リカって言うの。初めましてよねっ!」
「違うの、私、ひななの」
「えっ……、ま、まさか以前ソラちゃんと暮してた、ひな?」
「うん、ごめんね、色々心配かけちゃって」と申し訳なさそうに彼女は
深々と頭を下げた。
「もういいのよ! 気にしないで」と彼女の背中を何度もさする様子に
ソラちゃんも彼女同様「僕達今日からこの村で暮すことにしたんだ。
これからもひな共々宜しくね!」と頭を下げた。
『えっ! ホントに?』
2人同時に発せられた言葉の直後、相当嬉しかったのかお互い抱き合い、
歓喜に沸く様子を再度見せつけられた僕は嫉妬心からたまらず彼女たちに
急接近しボソッと呟いた。
「ただいま……」
「えっ、ただいまって誰よ?」「リンちゃん知ってる? このおじさん」
「知らないわよ、こんなおじさん」
「リカちゃんは知ってるんじゃない、このおじさん」
「だから知らないって言ってるじゃない、おじさんなんて」
「おい、おい、さっきからおじさん、おじさんっていい加減にしろよなっ、
全くよ~。ショ―タだよ! ショ――タ!」
『クスッ、クスッ、クスッ……』とお店全体に笑いが広がる中、黙って
村を飛び出し仲間に心配をかけたミカちゃんがここぞとばかり正体を
明かした。
「私もただいま~ へへっ!」
「えっ……、アンタ、もしかしてミカちゃん?」
「うん、ごめんね、心配かけちゃって」
「ごめんねじゃないわよ! アンタね、どんだけ心配したと思ってんの
よっ! リンちゃんもなんか言いなさいよ!」と怒り心頭のリカちゃんに
彼女は焦ったようにリュックを逆さにし、中身をテーブルにぶちまけた。
〈ドサッ!〉〈ドサッ!〉……
「な、何なのよコレ?」
「お菓子よ! みんなで食べよって思って買って来たの。それとコレは
リカちゃんで~ コレがリンちゃんねっ」とキラキラ光るネックレス
のような物をそれぞれ手渡すと彼女たちの表情が一変した。
「いいの? こんなの貰って」と笑顔の2人に安堵の表情を浮かべていた
ミカちゃんだったが徐々に顔が青ざめ、急に気分が悪くなったのか口元を
押さえながらしゃがみ込むような仕草を見せた。
「ミカちゃん、どうしたの? 大丈夫?」との問いかけに口を押さえ
ながら何度も頷くが、やがて反応が鈍くなり、とうとう彼女は意識を失い
その場に倒れ込んでしまった。
「大変! ミカちゃんが倒れちゃった! ミカちゃんが!!」




