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ループラインの軌跡 パート2  作者: リノ バークレー
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22-2(59)

〈ガタン!〉〈ゴトン!〉…… ……



 しばらくの間、村の救済作戦について意見交換が続くもあまりの情報量

の少なさに加え、未だはっきりとしない村の現状から次第に話題が村から

互いのリュックの中身へと変わっていった。


「ねぇねぇソラちゃん、その中身何なの?」とミカちゃんがパンパンに

膨らんだリュックを指差すと彼は「そうね、ほとんどが調味料含む料理関連

素材や乾燥した食材で、あとは釣り具一式だね。果物や野菜の種と薬類は

ひなに持って貰ってるんだ」と即答し、彼はおもむろにリュック横の

ポケットに手を突っ込んだ。

「何してるの?」

「コレね、みんなに持ってて貰おうと思ってね」と何やら紐の付いた

細長い物を取り出した。

「え~っとミカちゃんのは……、コレだ!」と紐に結び付けられた名前

を確認し全員が注目する中「ハイ!」と彼女に手渡した。

「それ何なの?」と僕は思わずソラちゃんに尋ねると彼は「お守りだよ」

と照れ臭そうに答えた。

「村でどんな危険な目に合うか分かんないからさー」と彼は全員に

それぞれ違った色のお守りを配り終えるとミカちゃんが急にクスクス笑い

出した。

「どうかした?」と尋ねるソラちゃんに彼女は紐に結び付けられた名前

部分を指差しながらいきなり彼に近づきシートに顔をこすり付け再び

笑い出した。

「ヒッヒッヒィ……だって字が、字が下手すぎるんだもん!」

「そんなでもないだろ~ まぁ上手くないのは認めるけどさ」

「そうだよ、ミカちゃん笑い過ぎだよ~」と僕も貰ったお守りを一応確認

すると、確かに死にかけのミミズのように見えるその形に思わず吹き出し

そうになるのを鋭く察したひなちゃんも僕同様必死に笑いを堪え、苦し

紛れにリュックの中身を聞いて来た。

「と、プッ! ところでショ―ちゃんの中身は何なの?」

「プッ……、ボ、ボクの中身はひなちゃんと同じ種関係と漢方薬だよ。

混ぜたり出来るし消費期限もないからね~」とお互いなんとか平静を

保っていたがコータ君の笑いが導火線となり一気に全員が笑いの渦に飲み

込まれてしまった。


『キャ~ ハッハッハッ!』『お、お腹イタ~イ!』


 車内全体が笑いに包まれる中、列車は無事15番駅に到着、そして

コータ君の連絡で待っていたナオちゃんが大きな荷物を背に何度も手を

振りながら笑顔で車内に入って来た。


「コータ、色々ありがとねっ! で……、ショ―ちゃんは?」

「あっ、この人です」と彼はしれっと僕の胸のあたりを指差した。

「お、おじさんが? えぇ~ そうなの」

「えぇ、そうですけど何か?」と完全に開き直った僕に彼女はかなり焦っ

た様子で自己紹介も後回しに話し始めた。

「奴らの狙いはレアストーンよ! 間違いないわ」

「やっぱりそうだったんだ!」とミカちゃんが割って入って来た。

「その情報って確かなの? だって僕の持ってる石はオパール以外

価値ゼロだよ」

「それが違ったのよ。私が地元に帰った時、石に詳しい先生が調べてくれ

たんだけど私が貰った青い石はアレキサンドライトっていって凄く貴重な

石なんだって!」

「えぇ~っ、そ、そうなの」

「そうなのよ。で、私こんな高価な宝石貰うワケにいかないんでショ―ちゃん

に返そうと7番村に立ち寄った時、村の異変に気付いたってワケなのよ」

「ところでその奴らって一体何処の誰なの?」

「洞窟の中をこっそり覗き見しただけで直接話したワケじゃないから分かん

ないけどなんか怪しい感じの男達だったわ。きっと彼らが今回の黒幕よ!」

と彼女が自信ありげに答えるとミカちゃんが不思議そうに首を傾げた。

「洞窟って?」

「レアストーンの採掘場所よ!」と即答するナオちゃんに対し彼女は再び

首を傾げるような仕草を見せた。

「どうして奴ら、採掘場所が分かったんだろ?」

「そこなのよね~ 私もそこんところが不思議なのよ。ショ―ちゃん誰かに

喋った?」

「えっ! そ、それは~」と明らか動揺を隠せないでいる僕にミカちゃん

が急に詰め寄って来た。

「喋ったんでしょ! 誰なのよ? 言いなさいよ!」

「私を無理やり働かせたクラブのオーナー?」

「それとも薬と交換した怪しい男?」

「誰なの、ハッキリ言いなさいよ!」

 

 もの凄い剣幕の彼女に圧倒されながらもなんとか耐え続けたが、彼女の次

なる一言で僕の張りつめていたものがもろくも音を立て崩れ落ちてしまった。


「もしかしてレイさん?」

「……うん、ゴメン」

 

 ぼやけて見えなかった状況が少しづつ線となりそして繋がり始め、列車内

が一瞬にして静まり返る中、ナオちゃんの呼びかけが一時的にではあるが

動揺する僕を救ってくれた。


「みんな、何ぼんやりしてるの! もうすぐ着くわよ。そんな恰好じゃ

奴らに気づかれるでしょ、早くコレに着替えて!」と大きなバックから

ポンチョの束を取り出し全員に配り始めた。

 

 連結部で各自着がえ終えると同時に列車は7番駅に到着し、僕たちは

とりあえずうさぎクラブを目指すも、相変わらず背が高く威圧感溢れる

草木は今後起こりうる困難な状況をまるで暗示するかのように僕たちの

前に立ちはだかった。


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