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「何よ~? 何ニヤついてるのよ」
……昨日に引き続き今日もレイちゃんのお家で飲み会。
「いや、なんかイイな~って」
「何よ、それ」
「前にも話したけど僕たちの村は7番村なんで精神面でも最高で7才
程度なんだ。だからある時期を超えると精神面で親と並んじゃうのよ」
「うん、うん、それで」
「だから些細なことでケンカしたり突如親が失踪したりするケースが
けっこうあって愛情に飢えてる子って意外と多いんだよ」
「へぇ~ ショ―ちゃんもそうなの?」
「えっ! ……ボクはそんなことないよ、ははっ、なに言ってんの」
「ほんとうに~っ」と急に彼女が顔を近づけて来るので僕は思わず
のけぞってしまった。
「何すんだよ、も~」
「ふふっ、心配しなくても私がショ―ちゃんの欠けてるピース埋めて
あげるわよ!」
「えっ!」
「だから私が埋めてあげるって!」
「……あっ! そ、そうだ。まだレイちゃんに見せてなかったよねっ」と
僕はカバンから布袋を取り出し自慢のストーンを無造作に机の上に並べた。
「凄いわね! どうしたのこれ?」
「レイちゃんにまだ言ってなかったけど実は僕、石屋さんもやってるんだ」
「石屋さんってアクセサリーとか売ってる?」
「いや、そうじゃなくって両替屋なんだ」
「へぇ~ つまりこのストーンはお金ってこと?」
「そう! でもココ特区じゃ価値ナシなんだけどね」「いつもご飯ごちそう
になってるのにお金受け取ってくんないから好きなの選んでよ」
「いいの?」
「うん! ごめんね、こんな安物で」
「いいわよ、そんなこと……、じゃコレ頂いていい?」と一番小さく少し
くすんだような石を選ぶ彼女に「コレにしなよ」と一番大きく僕一番の
お気に入りを差し出した。
「本当にこれ貰っていいの?」
「もちろんだよ! 石も喜んでるよ」
「ありがとう……、明日から夕食のグレードうんと上げなきゃね!」
「いいよ、これで」と和やかな会話がしばらく続いた後、レイちゃんが
質問を投げかけて来た。
「ところでショ―ちゃん、この石どこで見つけたの?」
「実はさ~」と再びカバンから村の地図を取り出し彼女に向けた。
「ほら、ココが昨日話したお花畑だよね。で、中に入らないで川と石垣に
沿ってず~っと左に進むとそのうち草木が生い茂っていて前に進めなく
なるんだ。
でも石垣と草木隙間を我慢して5メートルほど進むと洞窟があってココ
こそがストーンの発掘場所なんだ」
「へぇ~ なんかミステリアスね。それってショ―ちゃんが見つけたの?」
「いや、正確には2人で、なんだ」
「2人って?」
「実はボクが20才の時、つまり肉体年齢が、なんだけどテンちゃんって子
とよく遊んでたんだ」
「テンちゃんは幼なじみなの?」
「いや、テンちゃんは確か10才ぐらいだったかな……、でも精神年齢は
2人とも7才前後で妙に気が合ってホント仲良しだったんだ」
「へぇ~ なんか面白いね」
「で、ある日2人で探検ごっこしてる時に例の洞窟見つけてね。初めは
石でゲームしたりしてたんだけど段々飽きちゃって2人で他の利用法を考え
合ったんだ。ボクはアクセサリーにしようって言ったんだけどテンちゃんが
硬貨として流通させようって半ば押し切られたのが7番村のルーツなんだ」
「テンちゃんって先見の明があるのね」
「今思うと確かに凄いよね。で、洞窟の場所がバレると当然石の価値が
下がるからこれは2人の秘密にしょうって誓い合ったんだ」
「じゃ~ 2人で両替屋さん始めたのね」
「いや、始める前にテンちゃん急にいなくなっちゃったんで結局僕一人で
両替屋を始めたんだ」
「へぇ~ そうだったんだ」
「あれ? レイちゃんどうかした?」
「なんか嬉しいなって……、ショ―ちゃんが秘密にしてること私なんかに
話してくれるなんて」
「僕もよく分かんないけどレイちゃんに話したくなったんだ」と顔を上げる
とお互い目が合ってしまい急に気まずくなった僕は目をそらした。
……少し沈黙が続いた後、彼女がゆっくり立ち上がった。
「ごめん、ちょっと飲み過ぎちゃった。先に寝るね」
「大丈夫?」
「心配しないで、ショ―ちゃんはどうするの」
「ボク、もう少し飲んでていい?」
「いいわよ、ほどほどにね」
「うん、分かった」
あぁ~ぁ 行っちゃった……。
あっ! そうだ、ソラちゃんに電話するの忘れてた!
『あ~ もしもしソラちゃん、ショ―タだけど』
『来週の金曜日、8時に僕入れて8人予約お願いできる?』
『うん、うん、じゃ~ 宜しくね』




