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ソラちゃんのアドバイスどうり僕は主に7番村の住人を意識した
オモチャ作りに着手し、その後知育玩具に結び付ける方法で企画書制作
に奮闘する毎日を送るも企画/開発部との接触は思いのほか難航し、
実際企画書以上に僕の頭を悩ませていた。
だがそれはきわめて当然の成り行きでソラちゃんは当時平社員なのに
対し僕は資料部長という立場上、部外でもある商品開発に参加出来る
はずもなく途方に暮れてると廊下で偶然森本課長と遭遇してしまった。
「やぁ! 柴田部長、まだ懲りずに企画練ってるの?」
「うん、懲りずにね」
「だから、ムリだって。もう、いい加減諦めてよ」
「でも企画内容イイでしょ!」
「……!」
森本課長の表情が一瞬こわばるのを僕は見逃さなかった。
「でしょう~ やっぱり良かったでしょ、顔に出てるもん!」
「い、いや、ウン、そうね…… 何点かね」
「じゃ~ それ会議にかけてプッシュしてよ」
「いや~ でも部署は部署で色々あるんだよ、面倒くさいモンが」
(そんな事言ってるからダメなんだよ)
「えっ! なんか言った?」
「あっ、いや、何も、ははっ!」
「ここ数年ヒット商品ナシで定番商品とブランド力でなんとか
持ちこたえてる状態なんでしょ」
「それを言うなよ、気にしてるんだから」
……2人の間になんとも険悪な空気が流れたが僕は続けた。
「もし僕の企画が通って商品化されヒットしても僕は一切関係ナシ
ってことで企画部のアイデアでしたってことにすればイイじゃん!」
「えっ! イイのか?」
「もちろん、本来僕の仕事じゃないんだから当然だよ」
「じゃ、もし大失敗に終わったら?」
「そん時は僕が企画部の反対を押し切って強引に進めたって事で僕が
全責任負うよ! 課長はもちろん部長も知らなかった事でイイじゃん」
「ホントにそれでイイのか?」
「あぁイイよ、少しでも会社のお役に立てれるんならさ」
「柴田部長ってそんなだった?」
「えっ? そ、そうだよ、な、何言ってんの ははっ! あっ!
よ、用事思い出しちゃった。企画の件、よろしくね~」
「お、おい、大きな出すなよ、わかったから……」
僕は逃げるようにその場を後にしたが、以前ソラちゃんから絶対口
にしてはいけないよと言われていた言葉……「僕が責任を取る」を
つい流れで言ってしまった。
しかしまだ社会人として経験の浅い僕はそれほど気にも留めず明日
のソラちゃん達との飲み会に心躍らされていた。
早く明日にならないかな~。
そうそう、確かソラちゃんも以前グループ企画で3位になり奮闘中の
さなか7番村の旅で離脱し、今度は僕が引き継ぐ事になるなんて
ソラちゃんと僕は何か深い縁で結ばれているのかもしれないな。
他にも何かビックリするような出来事があったりして……ふふっ、
さっ、早よ、寝よ!




