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―7番村・市場にて―
「お――い、ゲンタ――っ!」
「何だよ!」
「あっ、やっぱりゲンタだ!」
「そうだよ。なんだ、ヒロシじゃんか、久しぶり!」
「あれ? もう牢屋から出て来たの? ちょっと早くない?」
「まっ、そうなんだけどな。オレもよく分かんないんだけどある男が
係のモンにお願いしてくれたらしく予定より早く出れたんだ」
「へぇ~ それってゲンタの友達?」
「イヤ、全然知らないヤツなんだけど妙に気が合ってな。ちょうど
これから会いに行くとこなんだ」
「あっ、コレ食べるか? その男から出所祝いで貰ったんだ」
「何コレ? 土か?」
「違うよ、チョコだよ、チョコ。食ってみ!」
「何だよ、チョコって?」
「カカオから出来てるんだって。てか、早く食ってみ!」
「わ、分かったよ……〈パク!〉…… !!!
「うっま――い! スゲーなこれ!」
「だろ~ もしかするとまた貰えるかもしんないぜ。オレに付いて
来るか?」
「うん! ぜひ紹介してよ!」
「あぁ、任せな」
「ところでその人、なんて名前?」
「確かリクって言う名で、定住しないで色んな町や村を渡り歩いてる
自称プロの旅人らしいんだ」
「へぇ~ なんか変わった人だね」
「まぁ、そうなんだけど不思議と人を引気付けるオーラみたいなのを
感じるんだ」
「何だよ、それ」
「まぁ、会えば分かるって!」
オレたちは普段村人がめったに立ち寄らない荒れた森の中を草木を
かき分けながら必死に突き進むと家の前で腕を組み、何やら考え事を
しているあの男が見えた。
「こ、こんにちわ! この前はどうも」
「おう! どうしたんだよ、今日は。お友達か?」
「ヒロシです、どうも」
「そうそう、いいモンやるから」と男は一旦家に戻り、再び現れた
男の手には何やら緑色の果物が……。
「何ですか、それ?」
「メロンだよ、食ったことない?」
『な、ないです』とオレたちは声を揃えた。
「食ってみろよ」
「は、はい!」と男の圧倒的な威圧感からオレたち2人の言葉は自然と
敬語に変わっていた。
「うめーだろ!」
「は、はい! もうビックリです」
「ところでオメーら、どっかこの辺で外から見えにくい畑知んねーか?」
「畑ですか?」
「あぁ、こっそり育てたいモノがあんだよ」
「何を育てるんですか?」
「まぁ、簡単に言えば薬の原料ってとこかな」「もし見つけたら教えて
くれよな。それとさ、この先、オレに仕事が入ったら手伝ってくれるか?
心配しねーでもたっぷりお礼はするぜ!」
「ホントですか!」
「あぁ、もちろんだよ」
「ぜ、ぜひやらせて下さい!」「なっ!」
「そうか、助かるよ」
「頑張ります。ハハッ!」
「ワりーけどこれからひと眠りするんでまたなっ!」
「は、はい!」
男はあくびをしながらオレたちに目を合わすことなく家の中に消えて
しまった。




