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ループラインの軌跡 パート2  作者: リノ バークレー
23/72

9-2(23)

 ……僕はふと思い立った。

 

 今までのように単に外側から観光客のように社会を観察するのではなく、

実際この町の住人と同じように社会生活を送ることでよりリアルな町の

表情を覗けるかもしれないと……。

 そう感じた僕はソラちゃんとの再会をもう少し遅らせ、柴田部長として

ひき続きサラリーマン生活を続ることにした。

 だがそれはある意味僕にとって何もかもが新鮮で刺激的だったが、何故か

優良企業なのに透明な時間枠に縛られ、自身を主張することさえためらう

この空気感がなんとも息苦しい毎日。

 毎朝満員電車の中で知らないおじさん達から全身モミモミマッサージ

を受け、汗まみれで資料部のデスクに座るも何もする事がない退屈な日々

の連続。 

 他の社員は退社時間が午後5時にもかかわらず速やかに退社出来ず、

上司の様子を伺い、社員同士お互いけん制し合う変な慣習に縛られた構図。

……そんな予想外の社会人生活に僕の愚痴は日に日に増え始めた。

 

 ホントこんな変な日々の連続でよくみんな平気な顔してるよな。

 今は怪しまれたら困るんでおとなしくしてるけどもう早くも僕限界かも。

 それにしてもこのおじさん、つまりは僕なんだけど部長に昇進するまで

よくこんな環境に耐えることが出来たよな~ ある意味尊敬するよ、ホント。

 まぁ、そんなことよりそろそろソラちゃんと会いたいんだけどどうする

かな。まさか特区がこんなにも広くって住人がこんなにも多いなんて

知らなかったもんな~。

 

「あっ、そうだ!」


 とりあえずスマホで検索かけてっと……〈宮下空〉エイッ!

……なんだ〈ミヤシタソラ 姓名判断〉? 困ったな、住所分かんないな。

そうそう〈ひなのや ランチ 宮下空〉でもう一度……エイッ!

……「ビンゴ!!」 ふぅ~ 良かった~ ラッキ―!

 ソラちゃん、土曜日の夜、必ず会いに行くから待っててね!

 

 まぁ、ここ数週間会社で過ごして残念だった点と良かった点、それは

おじさんは会社からさほど期待されてない悲しい現実とココのコロッケは

激ウマってこと、ぐらいかな。


〈パクっ!〉


 さぁ、お昼休みも終わったし資料部に戻るとすっか。


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