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ループラインの軌跡 パート2  作者: リノ バークレー
14/72

3-2(14)

 数日経つも私の切なる願いが叶うはずもなく、ほんのわずかな食べ物と

と水しか与えられない孤独な今の現状から少しでも早く解放されたい一心で

私は遂にボタンを押した。

 よほど嬉しかったのかすぐさまやって来たヒゲのおじさんに連れられた

私は同じフロアの一番奥にあるホステスさん専用部屋に通された。

 大きな部屋の壁には鏡が横一列綺麗に並び、数多くの衣装や装飾品

が並べられ今まで見たことのない光景に圧倒されるも、お花や甘い香りが

混ざり合う独特な臭いに気分が悪くなり思わず口を押さえた。

 体調がすぐれない中、先輩ホステスさんに生まれて初めてのお化粧して

もらい、ピンクのロングドレスに袖を通した瞬間自身のあまりの変貌ぶり

に感動した私のテンションは急上昇!

 突如上機嫌になった私は先輩から基本的な接客マナーやお酒の作り方

などレクチャーを受けたがただ一点だけ気になる事があった。

 それはお客に何をされても笑顔で我慢する事らしいがこの時点の私には

何を意味するのかいまいち理解出来ないでいた。

 そんな不安をよそに私は先輩に連れられすでに営業が始まっている

1階のクラブへと足を運んだが扉の向こうにある光景に更なる衝撃を

受けた。

 広大なフロアには数多くの白いソファーに上品な色合いのテーブルが

セットされ、至る所にキレイなお花があしらわれたなんとも華やかな光景

は私の想像を遥かに越え、それは思わず特区の事を忘れるほど心躍るもの

だった。 

 沢山の人と楽しくお喋りするうさぎクラブのようなお仕事は天職かも

しれないと時折感じていた私ははしゃぎたい気持ちを必死に抑え、数人の

ホステスさんと共に最初のテーブルに付いた。


「いらっしゃい、 今日は新人を紹介するわね!」

「は、初めまして、今日からよろしくねっ!」

『お――、新人さんか、こちらこそよろしくな!』と2人の上品そうな

おじさんが声を揃えてニコリと笑った。

 私は先輩からおじさんとおじさんの間に座るよう促され、全員で乾杯

する様子はまるでうさぎクラブのようだったが時間が経つにつれ何とも

言えない心地悪さを感じ始めた。

 それは上機嫌なおじさんが身体を密着させ、私の腰に腕を廻すその手

の動きが何とも落ち着かず私を不安にさせるからだ。

 そしてその不安は的中し、おじさんは私の逆鱗に触れる行動を取った。


「何すんのよっ! ヘンタイ!!」

 

 するとおじさんは呆れ顔でもう一度同じ行動を繰り返したので私は

強引におじさんの手を掴み、持ち上げた瞬間!


〈パシ――ン!〉 


 クラブ全体に響き渡る音と共に私は隣のおじさんの膝あたりに 

倒れ込んだ。 

 私は両手で顔を覆い、頭が真っ白ながら何が起ったのか考える

余裕もなく顔全体に広がる強烈な痛みと同時に涙が溢れ出た。

 泣き顔を見せたくない私はしばらく顔を伏せてるとオーナーらしき

声が聞こえ、強引に腕を掴まれるとそのまま引きずられるような形で

クラブを後にした。

 オーナーは私を部屋のベッドに放り投げ鋭い目つきで私を威嚇する

かのように言い放った。


「お前、客商売を何だと思ってんだ!」

「ううっ……」涙で答えられない私にオーナーは続けた。

「お前はお客に何をされても我慢なんだよ!」

「イヤよ! もうイヤ――ッ!」


 納得出来ない私にオーナーは「いい返事聞かせてよ」と笑みを浮かべ

突然殴る蹴るの暴行を繰り返した。

 そして遂に力尽き、鼻水や涙でぐちゃぐちゃながらも目一杯の笑顔で

「こ、これからもよろしくお願いします……」とだけ告げた私は朦朧

とした意識の中崩れるように倒れ込んでしまった。


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