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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

童話集

ウラシマ~海に舞い降りた天才~

作者: NiO

ギリギリ間に合ったっ……!


某漫画、完結記念っ……!


乙……!


圧倒的、乙……!

 むかしむかしっ……圧倒的おおむかしっ……!


 在るところに ウラシマタロウという男がいたっ……!


 男の職業は 漁師っ……!


 圧倒的 漁師っ……!


 しかし 男には もう1つの顔があった……!


 それは 博徒っ……!


 即ちっ……!


 賭博を生業にする 生き物という一面であったっ……!


 さっそくウラシマは 村にある賭場へと足を運ぶっ……!


「丁か半か!?」


「丁!」


「イヤ、半だ!」


「ククク……やってるやってる……」


 ウラシマは賭場を確認した後 意外にも ここをスルーっ……!


 それもそのはずっ……!


 ウラシマは 勝ちすぎたっ……!


 初めて賭場デビューをしたその日にっ……!


 村人のおよそ8割を 自己破産に追いやるほどの 大勝っ……!


 そして 出禁っ……!


 圧倒的 出禁っ……!


 ウラシマは、仕方なく海へと向かったっ……!


 ウラシマが釣りをしようとしていると 浜辺で若者たちが亀を虐めていたっ……!


「その二筒(リャンピン)、ロン、大車輪、役満だな」


「こっちもロン、青の洞門、役満だね」


「トリプルもありだよな。

 ロン、筒子九(シベリアン・)連宝燈(エクスプレス)、役満だぜ」


「」ぐにゃあ~


 亀は3人同時に役満を振り込み 頭を抱えていたっ……!


「ククク……亀を相手にハメ(イジメ)てるのかよ……」


 ウラシマがパッと見ただけでも解るレベルのイカサマっ……!


 当然、亀を除く3人はグルっ……!


 通しも、もちろん存在したっ……!


 右手で索子(ソーズ)筒子(ピンズ)萬子(マンズ)字牌(じはい)を表し。


 左手で数字を表すことで、望みの牌を手にいれるというものであったっ……!


 と言うかそもそも 筒子の数が多すぎるっ……!


 場に溢れる 不死(しなず)の筒子っ……!


 押し込まれるは 必定っ……!


「さあ、負け分は(オマエ)自身、だったな」


「ちょうど亀肉が食べたかったところなんだよね」


「さあ、さっさとこっちに来るんだぜ」


「ぐぐぐ……!

 お前らっ……地獄へ堕ちろっ……!」ボロボロ


 泣き叫ぶカメを横目で見ながら ウラシマは静かに ぼそりと独り言を呟くと そこからそそくさと離れようとしたっ……。


 そこへっ……!


「おい、お前。

 今、何て言ったんだな?」


 いじめっ子の一人が ウラシマに声を掛けたっ……!




 ……ざわっ……ざわっ……!


 ……ざわっ……ざわっ……!



「ククク……『何でもっとスッキリ生きられないかねぇ』と言ったのさ」


「それだけじゃないよね?」


 更に別のいじめっ子も 声をあげるっ……!


「ククク……『なんとも、ひねた打ち方。人をはめることばかり考えてきた人間の発想、痩せた考え』と言ったのさ」


「それだけじゃないのぜ?」


 最後のいじめっ子……恐らく大将格の男に ウラシマは言葉を続けたっ……!


「ククク……『なるほど凡夫だ、コイツらは死ぬまで保留する』と言ったのさ」


 ウラシマのあまりの物言いに 3人のいじめっ子は怒髪天をついたっ……!


「……そこまで言うなら、お兄さん、ひとつ、賭けでもするんだな」


「……よし、それじゃあ、今、この亀から巻き上げた絵本、『ウサギとカメ』から出してみようかね」


「絵本『ウサギとカメ』、徒競走をして勝ったのはウサギとカメ、どっちだぜ?」


 因みに、この時代は、おおむかしっ……!


 童話『ウサギとカメ』すら知れ渡っていない程の 圧倒的おおむかしっ……!


 ウラシマは考えるっ……!


 普通に考えたら 勝つのは当然 ウサギっ……!


 しかしそれでは 当たり前すぎるっ……!


 物語ならば恐らく 亀の勝ちっ……!


 いやしかし それは 引っかけでっ……!


「ふうん……ウサギと……カメ、ねえ?」


 ウラシマはそう言いながら、3人の顔を眺めるっ……!


「正解したら、亀は助けてあげようかな」


「ただし、間違えたら、お前の命を頂こうかね」


「笑えと言われれば笑い、死ねと言われたら死ぬ、奴隷になって貰うのぜ!

 せいぜい震えて……」


「『カメ』だ」


 ウラシマの即答に いじめっ子達が驚くっ……!


「なっ!?」


「ねっ!?」


「ぜっ!?」


 驚く3人に、ウラシマは種明かしをするっ……!


「ククク……『……ウサギと……カメ、ねえ?』と言った時のお前らの反応でスグ解ったさ……」


 例えそうだとしても 自身の人生を決める質問に まさかの即答っ……!


「ぐ……正解だな」


「ふん……カメを持っていくと良いね」


「ち……お前ら、行くぜ」


 いじめっ子達は気味の悪さを感じ 早々にその場からの撤退を試みたっ……!



 ……っがっ……!



「ククク……何を勘違いしてやがる……ここで終わるかよ……。


 倍プッシュ(・・・・・)……!


 俺の命にカメの命を乗せて、倍プッシュだ(・・・・・・)……!」



 ……ざわっ……ざわっ……!


 ……ざわっ……ざわっ……!



「……そ、そんな挑発に乗るつもりは無いんだな」


「俺達は、行くからね」


「さっさと帰るぜ」


「ククク……逃げるのか?

 (おとこ)を売っている商売じゃあ、ないのかよ?」


 ウラシマの挑発に いじめっ子のボスが 声をあげたっ……!


「ゆ、ゆゆゆ、許さないのぜ!


 吠え面かかせてやるのぜ!」


「ククク……その意気だ。


 俺とカメの命……それぞれ500円として、子分のお前ら二人がそれぞれ500円を賭ける、ていうのはどうだ?」


 この時代の500円は 現在に換算するとおよそ500億兆円っ……!


「ちょ、500円!?

 ボス、考え直して欲しいんだな!」


「流石に父さん母さんに怒られてしまうね!」


「五月蠅い……お前らは、黙って賭けるのぜ……!」


「な!?」


「ね!?」


 子分の二人は、しぶしぶ自宅から500円を持ってくるっ……!


 二人合わせて1000円っ……!


 圧倒的 1000円っ……!


「絶対、勝ってくれないかな!?」


「取られたら、困るんだよね!?」


「五月蠅い、静かにするのぜ!」


 3人の仲違いを横目で見つつ ウラシマは賭けの内容を提示したっ……!


「この亀が、あそこの木の葉っぱをくわえてここに戻ってくるまで、どのくらいの時間がかかるか、てのはどうだい?」


 いじめっ子のボスは、考えるっ……!


 カメが真面目に行えば、木の葉っぱをくわえて帰ってくるまでに恐らく7分前後であろうっ……!


「……勝敗は、どうやって決めるのぜ?」


「参加するものがそれぞれ予想し、一番正解に近かった者が勝者だ」


「俺達の賭けの内容を聞いて、カメがお前を勝たせようとするかも……」


「ククク……当然、誰がどんな答えを出したのかは、教えない状態での戦いになる」


「選ぶ権利は……」


「お前ら3人が先に選ぶので構わない……」


 いじめっ子のボスは、考えるっ……!


 3人で、6分、7分、8分と選べば、勝率は恐らく8割を越えるっ……!


 ボスは カメに聞こえないように 宣言したっ……!


「良いだろう、俺達は、『6分』『7分』『8分』を選択する……!」


「な!?」


「ね!?」


 勝手に他の二人の分も選んだボスに 思わず声をあげる子分達っ……!


「ククク……それが最終決定で、良いのか?」


「ああ……良いのぜ……!」


「ぼ、ボス!

 お金は、僕たちが出してるんだけどなあ!」


「絶対に負けないでくださいねえ!」


 3人の話し合いをしばらく見つめた後 ウラシマは声をあげたっ……!


「じゃあ、俺は『1分』だ」


「なっ!?」


「ねっ!?」


「ぜっ!?」


 3人の驚きを無視して ウラシマはカメに説明するっ……!


 遠くにある木の葉っぱを取り ここに戻ってきてくれ とっ……!


 賭けの事は気にせず とにかく全力を尽くして欲しい とっ……!


 カメが同意し 『用意どん!』の合図をした瞬間っ……!


 なぜか木に向かって走り出すウラシマっ……!


 そしてっ……!


「ほら、この葉っぱをくわえてくれ」


「え、あ、あ」


「問題は、『あそこの木の葉っぱをくわえてここに戻ってくるまで、どのくらいの時間がかかるか』だ」


「え、あ、あ」


「お前がこの葉っぱをくわえたら、勝利条件を満たすんだっ……!」


「え、あ、あ」


 カメは一頻り狼狽えた後 葉っぱをくわえたっ……!


 その時間 ジャスト 1分っ……!


 悪夢(ゆめ)は見れたかよっ……!


「き、汚え! 騙したな!」


「そんなインチキ、認められないのね!」


「だ、ダメなのぜ!」


 ノーカン、ノーカンと繰り返すいじめっ子3人っ……!


「……あのさあ。


 そもそもこの問題は『文章からは葉っぱをカメ以外が取ってきても構わない』ことを看破出来るかどうか、というモノだったんだがな」


「なっ!?」


「ねっ!?」


「ぜっ!?」


「しかも選択権の先攻も渡している。


 ククク……『勝てた』のに『勝てなかった』……。


 それは、『間抜け』というんだっ……!

 まるで『薄鈍(うすのろ)』っ……『木偶(でく)』っ……!

 親の餌を口を開けて待つ、呆けた雛鳥っ……!」


 あまりの正論に 言葉もないいじめっ子達っ……!


「……か、帰るのぜ」


 格付けは済んだっ……!


 いじめっ子のボスは これ以上絶対にウラシマに勝てないと理解し 引き返そうとするっ……!


「なっ!?」


「ねっ!?」


 金を取られた子分は当然後ろで非難の声をあげているが ボスは無視っ……!


 しかし その背後で ウラシマは叫ぶっ……!


「ククク……何を勘違いしてやがる……ここで終わるかよ……。


 倍プッシュ(・・・・・)……!


 俺の命とカメの命に、1000円を乗せて、倍プッシュだ(・・・・・・)……!


 ボスが500円を持ってきて、更に貴様ら3人の命を掛けて貰うっ……!


 ブレーキなんて、踏ませないっ……!


 お互い、限界まで行くっ……!


 最期は、灰も残さないっ……!」




 ……ざわっ……ざわっ……!


 ……ざわっ……ざわっ……!


 ボスは考えるっ……!


 負ける勝負に突っ込むなど それこそ間抜けっ……!


 単なる匹夫之勇っ……!


 虎に立ち向かう七面鳥っ……!


 ただただ散華するのみであるっ……!


「……俺達の、負けだぜ……もう、勘弁してくれだぜ……」


「「ぼ、ボス~!?」」


 内部分裂を始めるいじめっ子チームっ……!


 ウラシマは それをたただ興味がなさそうに ぼんやりと眺めていたっ……!


「う、ウラシマさん、助けてくれてありがとうございます!」


 ふと気がつくと 助けたカメが 土下座をしていたっ……!


 感謝っ……!


 圧倒的感謝っ……!


 しかしっ……!


「へぇ……それが、感謝のつもりか?


 本当に感謝の気持ちがあれば、どこでだって土下座は出来るはず……例え燃え盛る鉄板の上でもっ……!」


 ウラシマは冷淡にそう呟くと いじめっ子達が残した鉄板に 火をかけたっ……!


「ま、待ってください!

 そ、そうだ、お礼!

 どうか海の底の楽園……竜宮城へいらしてください!」


「ククク……竜宮城?」


 ウラシマは想像するっ……!


 タイやヒラメの舞い踊りっ……!

 絢爛豪華なご馳走の数々っ……!

 美しい城の姫様っ……!


 そう考えると カメの背中が だんだんと 見えてくるっ……!


『希望の船』……『希望の船(エスポワール)』にっ……!


「ククク……ところでカメよ。

 俺が木の葉っぱを取ってきたとき、何故スグにくわえなかった?」


「そそそそそそれは……!」


 カメの怯えに、ウラシマは核心を得ていた。


「竜宮城?


 呼吸も難しい地の底に、ノコノコ行けるかよっ……!


 竜がでたら、まだお慰み(・・・・・)っ……!


 果たして、鬼が出るか、蛇が出るかっ……!


 ……いや、やはりそこにいるのも、案外、人間なのかもしれないっ……!」


 そんなことを呟いて 一人笑いながら……なぜかカメの背中に乗る ウラシマっ……!


「え、あ、あ?


 なんで、どうしてっ……!


 ど、どうして、そこまで(・・・・)看破しながらっ(・・・・・・・)……!」


 そうっ……!


 竜宮城とは名ばかりっ……!


 それは 単なる地下送りっ……奴隷待遇待ちっ……その年数 実に 1050年っ……!


 それらを全て把握した上でっ……!


 ウラシマは『知れたこと』と 静かに言葉を続けたっ……!


狂気の沙汰ほど(・・・・・・・)……面白いっ(・・・・)……!」


 #################


 エピローグ


 竜宮城の玉座で 女性が笑い声を上げていたっ……!


「キキキキキっ……コココココっ……!」


 騙されて竜宮城に連れてこられた奴隷どもの姿に ただただ愉悦を浮かべる姫様っ……!


 画面に映し出されるのは 奴隷達の食事風景っ……!


 当然 タイやヒラメの舞い踊りはないっ……!


 絢爛豪華なご馳走の数々など 夢のまた夢っ……!


 食事は 麦飯が半膳っ……!


 そして ワカメが ちょっとだけっ……!


 夢じゃありませ~んっ……!


 これが 現実っ……!


(おつ)……圧倒的、乙……!


 コココココっ……クゥクゥクゥっ……!」


 姫様が膝を叩いて爆笑していると 小亀が現れ 緊急の報を伝えるっ……!


「姫様!

 次来る奴隷は、博徒……それも、最高峰の博徒とのことです!


 博徒は、危険な人種……この城のヒエラルキーを崩しかねない……!


 どうか、溺殺の命令を……!」


「構わん、入れろ」


「姫!?」


 小亀の絶望した表情を見ながら 竜宮城の主は どこかの博徒のように(・・・・・・・・・・) 呟いた。




「知れたことっ……!


 狂気の沙汰ほど(・・・・・・・)……面白いっ(・・・・)……!」

次回 竜宮城 地下チンチロリン編っ……!(続かない)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さんの発想が好きすぎる [一言] 次回がみたい
[一言] 姫様の笑い方…眼鏡で茶髪でチャラ男っぽさがにじみ出ておる…しかも鼻の形も独特なんだろうなぁ…
[一言] いろいろ混ざりすぎ(笑) 圧倒的、乙!
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