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プロローグ
――私は、誰?
――何故、こんな場所にいるの?
冷たい雨、地面に流れる血液、そして涙。
――苦しい。
それは息苦しさでもあり、心苦しさでもあった。いいえ、やはり解らない。ただ単に気持ちが晴れないだけなのかもしれない。それでも……、
――この痛みは、この痛みだけは、本物みたい……。
私の眼がなくなっている。果たして誰が奪ったのだろう?
「……違う、奪われたのではない、悪いのは、私……」
あの時の全てを思い出した私は、自分が何者なのかを思い出し、そしてその全てを思い出した。
「私は『人形』、そう、『人形』なのだ」
ある人形師の手によって生み出され、そしてある人物によって大切な《右眼》を奪われてしまった愚かな『人形』、それがこの私、アリス・ド・カオスだ。
「取り戻さなければ」
私の大切なパーツを、一刻も早く。だからその為に、
――私に魔力を与えてくれる人間を見つけなければならない。
そしてその想いを胸に秘めたまま、数百年の時を超え、私は現代に生き続けた。
俗にいう、
『生き人形』として……。