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部活に入ろう

ケンジェルやる気満々ですね。

 俺は嫌がる義人を連れて剣道部の見学にやって来た。

体育館の裏に剣道や柔道の武道をする武道棟が建っている。二階建てのようで、一階が剣道場になっていた。

「失礼しまーす。」とお辞儀をして裸足で道場の中に入る。義人は嫌がっていたわりに道場の中に入るときりっとした顔をして背筋が伸びている。小さい頃から剣道を習っていたと言うのは本当のようだ。裸足の足の裏から義人の「気」が伝わってくる。


千恵には、マネージャーになるのを断られた。「剣道はうちの道場の世話だけで充分。」と言われたのだ。がっかりである。千恵はもう、芝居をするという演劇部に入ったらしく、さっき運動場を見たら校舎の端に立って「あ・え・い・う・え・お・あ・お。」と大きな声を張り上げていた。義人に、千恵は何やってるんだと聞いたら、発声練習だと言われた。役者も大変だ。観客にはヤジを飛ばす奴もいるからな。やり返すには大声を出さないと負けちまうんだろう。


道場の中では部員の人たちが正座をして、メンを付ける前に手拭いを頭に巻いている所だった。

部の見学に来たのだろう、真新しい制服の見学組が隅の方に五人程立っていたので、俺たちもそっちに向かった。五人のうち二人は体育館シューズを履いていたが、俺たちが裸足で入って来たのを見て慌てて裸足になっていた。


部員全員がメンをつけ、竹刀を持って礼をする。すり足の稽古から、メン打ち、胴打ちとこなして、見学者がいる為だろう、二手に分かれて練習試合が始まった。

んーー、俺より強いやつが三人はいるな。けど孝志より強いやつはいない。

指導をしている先生の気は読めないが、強そうな感じがする。孝志も顧問の小野先生は強いと言っていた。

俺たち一年生はどうなのだろう。足の裏から伝わる気迫は義人のものが一番強い。ただ、一番右側にいる奴が食わせ物のような気がする。なんか勘に引っかかる奴だ。背は俺や義人より低いが、目つきが鋭い。身体も引き締まって俊敏そうだ。


汗まみれの林部長と名乗る人が俺たちの勧誘に来た時には、俺はもうこの部に入ると決めていた。

今日、入部届を出したのは見学をしていた七人中四人。俺・高原賢二=ケンジェル、目つきの鋭い男・上川斗真、体育館シューズを履いていた・加藤純、俺の勧誘に根負けした・武智義人の四人だ。

部活というのは、こういう練習の他に何をするんだろう。ワクワクするな。




◇◇◇




 加藤純が「同級生同士で親睦を深めない?」と言ってきたので四人で学校の校門のすぐ側にある駅前のコンビニに行った。学校の桜の大木の花吹雪がここのコンビニの駐車場にまで散ってきている。

「ジュースでも買って、公園に行く?」

加藤純の言う公園というのは、ジョンが散歩で入れない所ではないだろうか。俺は小声で義人に聞いた。

「俺たちが入っても叱られないのか?」

「大丈夫。犬は入れない公園もあるけど、人間は入れるんだ。」

ふーん、それはジョンには気の毒だ。義人によるとどこへでもションベンをされると子ども達が遊ぶのに汚いから犬は入れないらしい。ジョンはちゃんとトイレを使っているのに理不尽だな。


上川斗真が、俺の飲んだことのない黒いジュースを買い物かごに入れたので、俺もそれを飲んでみることにする。孝志にもらった財布から千円札を出そうとしたら、義人に財布ごと取り上げられて銀貨を二種類と銅貨を一つ手に持たされた。

「賢二くんは、まだ日本のお金に慣れていないんだね。」

「加藤純、俺のことはケンジェルと呼んでくれ。賢二っていう名前に慣れていないんだ。」

「わかった。じゃあ僕も加藤純じゃなくて、純って呼んでよ。」

「ああ、そうする。」

「俺は、斗真。武知、お前は義人でいいんだろ。」

「うん、いいよ。」


公園に行くと、石垣の側の長椅子が空いていたので、椅子と石垣に二人ずつ座って話しをすることにした。

「じゃあ、言い出しっぺの僕から自己紹介するね。加藤純。岸蔵南中の出身で、家では三人兄弟の末っ子。剣道は初心者なんだ。中学校の時はテニス部だったんだけど、春休みに剣道の試合を見て憧れちゃって、やってみたいと思ったんだ。一緒にいた同じクラスの子は、高校からじゃ無理そうだってしり込みしたんだけどね。みんなの足手まといになるかもしれないけど、頑張るからよろしく頼みます。」

「よろしく。僕は、小四の時から剣道をやってる。出身は中備西中、長男だけど上に五月蠅い姉が一人いる。あっ、名前は上川斗真。さっき言ったように斗真って呼んでくれ。」

「僕は東京から来たから中学校の名前を言っても判らないと思う。住んでいたのは吉祥寺。」

「えーー、待って待って、吉祥寺って漫画家がたくさん住んでるところじゃない?誰か漫画家に会ったことある?」

「漫画家ってなんだ?」

「ケンジェル、漫画家の説明は後でするよ。純、知ってるかどうかわからないけど・・。僕がよく見かけてたのはグワッシッの人。」

「おーーー、大物だねっ。いいなぁ。やっぱり縞の服を着てるの?」

「そう、大抵ね。えっと、自己紹介の続きをするよ。名前は武知義人、義人と呼んでくれ。兄弟はいない。一人っ子だ。以上。」

みんなが俺を見るのでクラスでやったように自己紹介をする。

「ナマエーハ、ケンジェルでぇーす。ガイコクからきましたー。タチバナさぁんのイエにいるんですぅー。ヨロシクオネガイシマスー。」


純と斗真がぽかーんとして、義人が頭を抱えている。

「・・・ケンジェル、クラスで自己紹介した時より日本語はうまくなったんだろ。無理に外人風にしゃべらなくてもいいんだ。」

「なんだそうなのか。・・俺、ケンジェル。同じクラスの橘千恵の家に厄介になってる。剣はよく使ってたんだが日本の剣道のことはよく知らなくて、今、橘孝志に教えてもらっているところだ。純と同じ初心者だ。よろしく頼む。」

「橘孝志って、あの橘孝志かっ?!」

「そうなんだよ、斗真。」

「ん? 斗真も義人も、孝志のこと知ってるのか?」

「おまっ・・・孝志って、呼び捨てにしてるのかよー。全国大会の覇者じゃないかっ。玄関の飾り棚に優勝カップがあるだろっ。」

「へぇー、それってダンジョンのドロップ品?」


義人に足を蹴られた。

「なぁ、飲み物でも飲もう。僕、喉が渇いたよ。」

「・・ん。そうだね。じゃあこれが義人。ケンジェルと斗真は同じのだったね。はいっ。」

「あっ。」

俺が出した手と純の手がぶつかって、俺のジュースのボトルが地面に落ちてしまった。

「あっ、ごめん。ケンジェル。」

「大丈夫だ。」

そう、このボトルは何でできているのか知らないが落としたぐらいじゃ割れないのだ。蓋も締まっているので、こぼれてもいない。便利だ。俺がボトルを拾って蓋を開けようとすると、「あっ、バカっ、ケンジェ・・。」


義人が慌てて俺を止めようとしたが遅かった。

黒い飲み物と泡が爆発するように俺と純の手や足にかかった。なんだこれは。なんか手がべとべとしゅわしゅわする。洗わなきゃな。

いつものように「水よ出でよっ。風よちからを。」と口に出す。二人の手足にかかったべとべととしゅわしゅわを水魔法で洗い流して、風魔法で乾かす。

顔を上げると、三人が俺を凝視している。

「・・あっ、やっちまった。」


「・・・ケンジェルー。」

「わりぃ、ついクセで・・。」

「もう僕は知らないからな。自分で説明しろよ。」

義人に見捨てられてしまった。

俺は、固まってしまっている純と斗真に本当の事を話した。斗真は俺の話を聞いてもぼんやりしたままだったが、我に返った純の追及は凄かった。こいつ、俺よりダンジョンに詳しいんじゃね? だからー、俺はダンジョンに行った事なんかないっつうの。地下何階まであるかなんて噂でしか聞いた事ねーよ。


詳しいことは、アール・ピー・ジーさんに聞いてくれー。






剣道のことはよく知らないので、間違っている表現があったらごめんなさい。

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