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ゴールデンウィークと試験勉強

皆で仲良く・・。

 「ケンジェルは集中と緩和が上手いわー。」といつも千恵に言われる。その二つは魔法使いには必須の技能なので、当然のことである。

ゴールデンウィークに慎介、美千代、義人、小夜子、それに俺と千恵の六人で試験勉強をすることになった。人数が多いので剣道教室が休みの日曜日に、橘家の剣道場を貸してもらう。


五人は学校から出ている補習用のテキストを使って、休み明けテストの対策をするようだ。俺は今まで通り小学生が使うドリルをやっている。しかしやっている内容は格段に進歩していて、漢字は今では五年生のものだし、数学も応用問題が多くなってきている。「太郎の十五分後に次郎が出発します。けれど次郎は太郎の二倍のスピードで走ることが出来ます。どちらが先にゴールに着くでしょう。」と言われてもどっちでもいいじゃん。と思ってはいるが、一応教えてもらった公式に当てはめて解いていく。算数は答えがすっきりと出て来るので好きな教科だ。それに比べて英語などは単語やスペルを覚えるところからなので、なかなか上達を感じない。


俺と健一は二人で一緒に千恵に英語を教えてもらっている。

文子が付箋という軽く物に引っ付けられる紙とマスキングテープという剥がすことのできるテープを買ってきてくれた。その紙やテープにマジックで英語の単語を書いて、そこいらじゅうの家具や物に貼っていっては覚えたら剥がすということを繰り返した。最初の800語を覚えたら文章に入るね。と言われていたので健一と一緒に頑張って覚えた。今は中学一年生の英語の文法とやらを始めたばかりだ。文法に入ると名前の言葉だけではなくなって、動作の言葉や感情や様子を表す言葉までも入って来て、只今絶賛混乱状態である。それに現在・過去・未来の時の表現や複数のs等が俺を悩ませている。三単現のsって奴が曲者だ。単語によってsだったりesだったりするし、yをiに変えてesをつける奴などはとんでもない奴である。母音が関係するらしいが、千恵が言うとボインの事しか考えられなくなる。困った事だ。


勉強会といっても、皆で義人に教わる会じゃないかと思える。義人は学校の補修用のテキストはもう全部解き終わっているので、他の四人が義人にわからない所を聞いている。

義人は凄い男のようで、全国模試という試験でいつも五本の指に入っているらしい。ほとんど百点で偶に一問か二問間違えると言っていた。皆が「おおっーー!」と大声を出していたので凄いことなんだろう。ダンジョンでラスボスを倒すようなものなのかな。


「ケンジェルは理科や社会はやらないのか?」と義人に聞かれた。「千恵が、その二つは夏休みにしましょうって言うんだ。暗記することが多いから、英単語の暗記がある程度できてからなんだってさ。」俺が答えると義人が成程と言っていた。「じゃあ理科の勉強の前に科学館に行ってみるといいよ。社会の方は地図を見ながら覚えると興味が湧くかも。」とアドバイスをしてくれた。義人は小学生の時にそうやって興味を持って勉強して来たそうだ。へー、それぞれの教科によって勉強の仕方がいろいろあるんだな。




◇◇◇




 集中して勉強した後は集中して遊ぶのがセオリーだそうだ。

午前中みっちりと勉強をした俺たちは、ファスト・フード店でハンバーガーを食べている。FastもFoodもHamburgerもわかるぞっ。俺ってすげー、天才じゃん。

でも何で日本なのに外国の言葉だらけなんだろう。義人に聞くと、外来といってよその国から来た物にはそのまま外国の言葉がついているそうだ。「へーそうなんだ。ということは、このハンバーガーは英国で出来た物なんだな。」というと「いや違う。米国だ。」と言う。「何で米語じゃなくて英語で言うんだ?」

「んー、それはー、とにかく夏休みに社会をやったらわかるよ。」と義人に言われた。その後、義人が千恵に「簡単な世界史も日本史と並行してケンジェルにやらせるべきだ。」と言っていた。わけがわからん。


「腹が一杯になったから、ゲーセンにでも行くか。」と慎介が言うので、皆でゲーセンという可笑しな名前の店に行く。そこはあの箱に向かって五月蠅い音をさせるところだった。先ずは金をコインに両替する。俺は孝志たちの金を遊びに使いたくなかったので、皆のやることを見学させてもらうことにする。箱の中には沢山の色や音が仕舞ってあるらしく、あちこちの箱がピカピカ光っていろんな音を大音量で流している。

ここで大活躍をしたのが意外にもキュラスだった。小夜子は大人しそうに見えて攻撃的で、ゲームの進め方も大胆だった。積極的に見える美千代のほうが慎重で堅実的な戦い方をする。女って見た目だけじゃわからないもんだな。

千恵も美千代と一緒で、大胆な口を聴くわりに思い切りが悪くタイミングをことごとく外している。俺が見かねて機械を操ってぬいぐるみを取ってやったらいやに感激していた。


慎介がダーツをやっていたので、風魔法でちょいと手助けしたら睨まれてしまった。下手でも自分でやりたかったらしい。義人はバスケットボールのゲームをやっていた。球技大会でバレーの練習をしているときにリングにボールを入れるのがバスケットボールというスポーツだと教えてもらったが、ここのリングはじっとしていなくて動き回っている。しかし義人は動くリングに次々とボールを放り込んで、周りで見ている者に歓声を上げさせていた。「嫌味な奴だな。義人が出来ないものってないのかよ。」と慎介がくさっていた。たまにこういう奴がいるもんだ。俺が旅をしている時に出会った冒険者で、器用に何でもできる奴がいた。でも何でもできると自分にとっては面白みがないらしい。そいつは冒険者をやめて王都で医者になると言っていたが、あれからどうしたんだろう。


ゲームをした後で、モールの隣にある公園に行った。

そこでは、水の塊が音楽に合わせて、びゅっびゅっと飛び出してくる不可思議な広場があった。どういう魔法でその水が飛び出してくるんだろうと思って、水が止まった時に穴の中を覗きに行ったら、まだ水を蓄えていたらしく、顔にまともに水を食らってしまった。頭に来てこっちも水魔法で対抗しようとしたら、千恵に大慌てでとめられた。そうか、人前で魔法を使っちゃダメなんだった。


女の子三人にハンカチで顔を拭いてもらっていると、慎介に「ケンジェル、羨ましいなおい。わざとか? わざとじゃないだろうな。」と言われたが、わざわざ水を被るバカがどこにいる? この世界の水魔法は油断できないな。今度はもっと慎重に覗いて見よう。


公園の中を川が流れている。浅いほうの川では子ども達が大勢水遊びをしていた。「危ない!」「キャー、たっくん!」と言う声に振り返ると、深いほうの川に男の子が一人落ちたのが見えた。

「ウンディーネっ!!」俺は水の妖精に男の子の救助を願い、自分も川の中に飛び込んだ。ウンディーネが俺を男の子がいるところに導いてくれる。水の中でその子の小さな体を抱え込むと勢いよく川の中から飛び上がり、岸辺の母親らしい人にその男の子を託した。周りの皆は唖然としていたが、命が助かったんだ少々の魔法はおおめに見て欲しい。


「ありがとうございますっ。なんてお礼をしたらいいか・・。後ほどお礼に伺います。お名前を教えてください。」母親はそう言うのだが俺は目立たないほうが助かる。「そんなことより、この子を着替えさせるとかしてください。お医者さんに見せたほうがいいですよ。」と言うと、「すぐそこにこの子のおじさんのクリニックがあるんです。貴方の着替えも用意しますので、一緒に来てくださいっ。」と強引に連れて行かれそうになる。困って千恵を見ると、「しょうがないからここはこの子のお母さんの言葉に甘えましょう。」と言われた。まあこの場を離れたほうが得策かとこのお母さんについて行くことにした。


別に着替えなくても風魔法を使えば服は乾くんだけどなぁ。

クリニックとやらに行くと、どこかで見たような建物だ。「あれ? ツバサ・ケア・クリニックだ。」千恵がそう言うので思い出した。うげっ、ここは拷問ばばぁがいるところじゃないかっ。腕に針を刺されたことを思い出す。俺が慌てて帰ろうとすると、慎介と義人に両側から腕を掴まれた。「ケンジェル、ここはことをうやむやにしないでお礼をされたほうがいいぞ。後から不思議なヒーローを探されると面倒だ。」そうか、でもなぁ・・・千恵を縋るように見る。「大丈夫。今日は針は刺されないから。」本当か?本当だろうな。


なんと、その子のおじさんというのは河合先生だった。

俺と男の子は河合先生に診察されて、異状がないという太鼓判を押された。やれやれだ。その後、個室に案内されて「ケンジェル、拓也を救ってくれて本当にありがとう。」と手を握って熱くお礼を言われた。  「もう風魔法を使ってもいいよ。」と言ってもらったので、自分の服を乾かす。拓也のお母さんは久美さんと言うそうだが、その久美さんがあんぐりと口を開けて俺の魔法を見ていた。ついでに拓也の服も乾かしておく。「本当に便利たねぇ。」と河合先生に感心された。


魔法は使ってしまったが、知っている人でよかった。河合先生はクリニックの他の人に気付かれないように服が乾いた俺たちを裏口から脱出させてくれた。

「ケンジェルと一緒にいると、いろんなことがあって飽きないな。」と慎介に言われた。「でも、口止めが出来る人だったからよかったじゃない。どうなることかと思ったわ。」美千代の言うことは最もだ。俺も慌てていたから水からジャンプして岸辺に上がってしまったけれど、もっとゆっくりと川から上がればよかったな。と反省した。



頭も体も両方使って疲れた一日だったが、帰り道で千恵が俺の取ってやったぬいぐるみを抱きしめているのを見ると、顔がにやけてくる。いい一日だったじゃないか。・・・男って単純だ。




よかったよかった。

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