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冒険者の受難

冒険者の話のようです。

 濃い霧の中を歩いていた。

自分の足元も霞むほどの霧など初めてだ。何かにぶつからないように俺は右手を顔の前に掲げながら少しづつ慎重に歩を進めていく。光魔法で明かりは灯しているのだが、光は霧に吸収されて何も映し出そうとはしない。この真っ白い霧と多分夜になっているのだろうカサリとも音のしない静寂が、さっきから俺を包み込んでいる。


パーティーとは、はぐれてしまったな。

今日、冒険者ギルドで出会ったばかりの五人の冒険者で、即席に組んだばかりのパーティーだった。赤髭のジョンをリーダーに、斥候が二人、後方支援に魔法使いの俺と弓の得意なエルフの五人だ。まだ名前も碌に憶えていない。

冒険者ギルドのあった村を出て、ここいらでは有名なダンジョンに腕試しに向かう途中で、オークの群れに襲われた。普段なら魔法であっという間に片付ける程度の敵だったが、不意を突かれたためにパーティーの形態が崩れてしまった。

一旦引いて体勢を立て直そうと、森の中に逃げ込んだのはいいのだが、この濃い霧のせいでどうやら皆とはぐれてしまったようだ。

風魔法で霧を吹き飛ばそうとしたが何故かこのふわふわした霧はびくともしない。声を限りに叫んだが、誰からも返事が帰ってこない。まさか、皆やられたわけでもあるまい。

しょうがないので、この霧の中を恐る恐る歩いているわけだ。もう、大方二時間ほど。


「んっ? なんか見える。」

前方の霧が薄くなってきた。やっと霧のある土地を抜け出たようだ。

「なんだ? ・・・ここは・・・・・・。」


街の中? しかし、こんな街並みは見たことがないぞ。俺の歩いている地面は石畳ではない。なにか黒くてのっぺりとした石が果てしなく続いている。こんな切れ目のない石があるのだろうか。よほど腕のいい職人たちを何人も動員して造られたに違いない。

それに、ペンキで白い線まで描かれている。勿体ない。道にこんなものを描いても馬車が行き交えば直ぐに消えてしまうだろうに。消えない魔法でもかけられているのだろうか。・・なんの為に?・・わからん。


向こうから人がやってくるようだ。

とにかく、ここがどこか教えて貰おう。冒険者ギルドのあった村に一旦帰らなければならない。パーティーの皆の安否も気にかかるしな。

男の子のようだ。声を掛けようとした途端に、その子が側にある建物に入ろうとしたので、慌てて腕をつかんだ。

「えっ?!!」

「あっ、ごめん。怪しいものじゃないんだ。ちょっと教えて欲しいことが・・あっ・・て・・・。」


怪しいものじゃないだって、俺は何を言っているんだ。

その子が入ろうとした建物から漏れる光で、俺たち二人がいやにはっきりと照らし出されている。

二人で向かい合ってお互いを見ると、なんとも異質な感じがする。

顔かたち、その肌の色、服装、靴、どれをどう取っても全然違う。・・外国?・・いや、俺の国に隣接してこんな近くに他の国があるなんて聞いたことがない。俺は霧の中で迷って妖精にでも化かされているのだろうか。


「お兄さん、誰? 教えて欲しいことって、何なの?」

っく、言葉が通じるのか?!

「・・ここがどこだか教えて欲しい。トカリ村の近くなのか? どの道を行ったら帰れるのか知っているか?」

「もう、夜なのにこれからそこに行くの? 終電、もう行っちゃったよ。んー、お兄さん外国の人だよね。地名を言ってもわかるのかな? ここは大賀県の岸蔵市。泊まっているホテルの名前、わかる?お父さんに送って行ってって頼んであげるよ。だいぶ疲れてるみたいだし。ちょっと待ってて。」

少年はそう言うと、建物の扉を開けて中へ入って行った。


俺は、緊張の糸が切れてへなへなとその場所に座り込んだ。

外国の人? オオカケンノキシクラシなんだその地名は!そんな長い街の名前は聞いたことがない。

俺は知らないうちに転移魔法を身に着けていたのだろうか。


何刻もたたないうちに、少年は大柄な男性を連れて出て来た。

「ありゃ、やっぱり疲れてたんだね。ほら、お父さん、この人だよ。」

男性は俺を上からジロリと見廻す。俺は慌てて立ち上がった。

「なんかわけがありそうだな。家で休んでいきなさい。健一、この人を道場の方へご案内して。」

「はぁーい。」


もうこうなったら、この親切な人たちに縋るしかない。

ここがどこなのか、どうやったら元いた場所へ戻れるのか皆目見当がつかないのだ。



・・・いったい俺はどうなってしまうのだろう。




異世界転移を逆転してみたらどうだろう・・と書いてしまいました。

よろしかったら、楽しんでいってください。

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