悪魔教室
「できたよ、できたよぉぉ」
顔、体型、発生音。どれからも感じ取れることは、この人物はもうダメであること。
成長の兆しを失った者。ノートに描かれた落書きのようなものを指差し、明らかにその者より小さく、若い者達に見せつけあった。
「じょーず、じょーず」
彼等もまた、目の耀きを失い褒め言葉を送り。それをまとも受けるのである。
全てが実験というケース箱の中で行なわれていること。外側から異質な光景を平然と見ていて語らう3人。
「どーです?近い者になったでしょう?」
実験の発案者は七三分けが決まるスーツ姿の、サラリーマンのような男。名は伊賀吉峰。
「悪魔と揶揄される物や人もおられるようですが、私はこちらの方が正しいと思います」
これは人の可能性について実験。可能性が開けるというのなら、人間という幾多にもいるゴミ共を使っても平気なのだ。
屍になることも可能性であり、いずれは誰でも辿り着く境地。
「ねー、ダーリヤさん。酉さんも。納得でしょう?」
伊賀が言っている悪魔とはケース内で起こっていることを語っている。悪魔という奴は常に見えていないもの。
「伊賀よ。私は人類が進歩するべきためにお前と組んだわけだ。愚弄なら済むが、失敗を選ぶなら今すぐ屍に変えるぞ」
「はははっ。冗談っぽく言ってくださいよ。まったく、あなたは生真面目過ぎますね」
人という形をしながらも中身はもっとも遠い。知と暴を兼ね備えた、人間の両端の極みにいるような達人。姿を見誤るほどの威圧感を発するダーリヤ・レジリフト=アッガイマン。握った拳を見てしまった伊賀が大きな汗を流していた。
「”教育”を悪魔と考えるのは中々、伊賀さんも趣がありますね」
「嬉しいですね。酉さんは分かってくれますね」
容姿端麗な女性の酉麗子は、ダーリヤとは違った存在感。心を持っているのか分からないほど、人とはかけ離れた精神力と野心。伊賀もダーリヤも、彼女だけは計れない。
「とてもクズの考えだと私には思えて笑えます」
「あはははは。このクソ鳥。ぶっ殺されてぇのか?」
伊賀が懐から取り出した拳銃を突きつけられても酉は終始笑顔でいられる。ここで死ぬわけがないという気持ちでもない。むしろ、伊賀とダーリヤが不幸になるだけと伝えたい表情をしている。振った伊賀から拳銃を降ろした。
「いいでしょう。まー、残念な話はここまでにしましょう」
どんな偉業も日の当てられない地盤作りが始まっていく。表面だけを第三者達だけは見て、内側を除けば怯えて逃げ出す。人間はそーゆう存在。
「私達は”利害の一致”で、人類を潰そうと思います。残った人類をどう扱っていくか、今から先のことともなりますが」
野心だけでも、その能力だけを備えていても足りないものがある。また、重ねあっても届かない理由もあろう。
「私は人に持っている才を正しく使ってもらう環境のため、ダーリヤさんは人類の進歩、及びその進化のため。酉さんはこの世界を全て変えるため。”利害の一致”のみです。ではなる世界はどーあるべきか、ここで最終協議をしましょう」
伊賀は人材と金、施設を提供した。ダーリヤは金、地位、暴力を提供した。酉は技術、構造、社会を提供した。
3人が中心となり、彼等を固める人々がいて、今こーして恐るべきことに沈黙しながら誕生してしまったもの。
「上手くなりたいっ……」
人の探求心。努力を惜しまずと、
体は他者をひきつける蜂蜜のような甘い匂いを発する。
その香りに誘われるように人々は飛びまわって行く。
ある者は親交を、ある者は貶そうと、ある者は讃えようと、ある者は金に変えようと、
人間というのはとても不公平にできている。しかし、その不公平があるから様々な物が生み出される。同時に廃れるものもある。
世界が変わったとき、その中で散っていた命も、努力していたことも忘れられるどころか、存在していなかったと肯定されるのだろう。
「もっと、もっと」
成長という概念がなくなった場所。人の意志がなくなっていく。
「……なれないのかなぁ……」
これから上手くなっていきたい。そーいう弱い気持ちがなくなった世界。とても幸せに思っていた。少なくとも、自分が上手くなかった時までは思っていた。
万能であると同時に先へ進まなくなった到着地。出会う者達は皆、自分であり自分じゃなくなった場所。
最近、新しいことを挑戦しているのですが上手くいきません。
始めたころはしょうがないと思っていましたが、2,3日で才能がないんだなと、感じて嫌気になります。それでも1年ぐらい使っても良いぐらいの気持ちでやっていこうと。好き→上達→進歩→好きのサイクルがなれれば嬉しいかなと。
あとがきなのによく喋る自分だな。