キミが恋しくて
『伊織?何怒ってんの?』
放課後、学校からの帰り道。恋人の諒矢の言葉を無視して、黙々と歩く。
同じクラスの梁川と廊下で楽しそうに話す諒矢を見て、腹が立ったのだ。
『伊織さぁ、もしかして俺が梁川と話してた事、妬いてる?』
『なっ……ち、ちがうよ。何で梁川と話してる諒矢を見て俺が嫉妬しなきゃなんね……んっ…』
俺の言葉は、諒矢のキスによって拐われてしまった。
それは、いつもよりも長く、優しいキス。諒矢の唇から、甘い疼きが波紋のように広がっていく。
くだらない嫉妬でモヤモヤしていた俺の気持ちも、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
『あのさ、どんなに俺が伊織にメロメロなのか、わかってる?』
恥ずかしすぎる台詞に、俺は諒矢の顔を直視できない。
『……ゴメン。梁川と楽しそうに話してる諒矢見てたら、なんだか妬けてきちゃって』
さっきまで嫉妬モ―ド全開だったのがバレバレだ。
『伊織の嫉妬も、かわいいよ。それに、俺に興味なくなってもらっても困るし』
やっぱり諒矢には、敵わないゃ。俺だって、同じ気持ちだけど、こんなに素直に諒矢に伝えられないし。
もどかしい気持ちを何とかしたくて、俺の方から諒矢にキスをした。
言葉だけでは伝りきらない気持ちを込めて……
…END…