勇気
「図星なんだな。やっぱりそうだったんだ。大丈夫だよ、咲希ちゃんも可愛いからさ」
ニヤニヤとしながら、和輝は咲希の頭を撫でた。
「な、何しやがる。変態!」
嬉しいくせに咲希は手を剥がし、蹴りを入れた。
「姫様に向かって、何てことを。何なんですか!」
和輝の行動に、一葉も拳を震わせた。しかし咲希が蹴り上げたのを確認し、なんとか殴らないよう抑えたのであった。
「もう、ム~カ~つ~く~」
恋という気持ちを知らなくて、咲希は苛立っていた。イライラしていて嬉しくて、自分の気持ちが分からなくて走り出していた。
「って、姫様!? どこに行くおつもりですか」
その原因が和輝だと分かっていても、一葉も恋と言う気持ちは知らなかった。だから和輝が咲希を苦しめていると感じ、和輝をよく思っていなかった。
「だから、高橋のとこって言ってんだろ」
咲希は城から出ても、走り続けた。和輝のことを見たくなかった。和輝のこと見たかったけど、見たくなかったから前を走り続けた。
「覚悟しろよ!」
さっさと咲希は街も出て行き、超高速で高橋雄大がいる城まで到着した。
「おい雄大! 話に来たぞ」
到着すると同時に、何も見ずに城に向かって叫んだ。
「咲希殿? わざわざお越しになられたのですか。まあ、お話に来たのなら……どうぞ」
驚きはしたものの、雄大は咲希を城の中に招き入れた。拒んで咲希に嫌われることを恐れたからだ。