恋
「可愛い子だったな」
完全に見えなくなると、和輝はにやけながらそう呟いた。野乃花にデレデレな和輝が、咲希は気に入らなかった。
「うっさい! じゃあな、変態。もうっ、一葉はどこだ!」
不機嫌に咲希は叫んだ。すると、その声を聞いた一葉はすぐに飛んできた。
「一葉、今から高橋のところに行こう」
乱しており咲希は、冷静な判断すらできないでいたのであった。冗談ではなく、本気でそんなことを言っていたのだから。
「……はい?」
咲希の言葉に、一葉は首を傾げた。
「今から行ってくる。いいな」
一葉が首を傾げていることも気にせず、そう言って咲希は歩き始めた。
「姫様!?」
仕方がないので一葉と和輝は、咲希に急いで付いて行った。
「変態は付いて来なくていい」
拗ねた子供のように不機嫌そうに、唇を尖らせて咲希は言う。すると和輝は何か閃いたかのように手を叩いた。
「分かった! 咲希ちゃんは、嫉妬してるんだね。俺が野乃花ちゃんにばっか可愛いって言ったから」
そう言った和輝は、思い切りドヤ顔をしていた。が、そんなもの咲希も一葉も相手にはしなかった。
「違う! 思いっきり図星だけどちがぁう!!」
和輝が言われた瞬間、恥ずかしくなり咲希は叫んだ。