表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サクラのキセツ 陽  作者: 斎藤桜
7/167

坂井野乃花

「日良様! 咲希様のとこでも勝手に来ちゃダメですって! 日良様になんかあったら、ノンは……」

 日良が和輝の服を見ていると、幼い叫び声が聞こえて来た。やがてその声の持ち主が走って来て、そのまま日良に後ろから飛び付いた。

 背中ほどまでの暗い茶色の髪は、ふわんと可愛らしく広がっている。少女はかなり幼い顔立ちをしており、最早幼女と呼べるほどであった。しかし大きな瞳に、幼い子供のような輝きは映っていないのであった。

「もう帰りますから、来なくったっていいですよぅ」

 少し拗ねたように、日良は背中の幼女を引っぺがした。

「可愛い子。こういう子にお兄ちゃんって呼ばれたいな」

 その様子を眺め、無意識に和輝は呟いていた。

「は!? 何を言っているんですか! 変態です! 日良様! こいつ変態です!」

 和輝の言葉を理解してはいなかった。しかし和輝の表情と言い方から、幼女は日良に必死に訴え掛けた。

「ななな、何を言ってるのだ! 変態! 変態! 変態!」

 やがて咲希も同じように変態と叫び始めた。その幼女と咲希は、一斉に非難の言葉を浴びせ続ける。

「あははは、やはり面白い人です。野乃花、この人と結婚でもしたらどうですか? 毎日楽しそうですよ」

 そう微笑んで日良は、軽く和輝の方へと背中を押した。

「嫌です嫌です嫌です! 絶対に嫌です! いくら日良様のお言葉でも! ぜ~ったいに嫌です!!」

 ジタバタと子供っぽく暴れていた為、和輝は更に喜んでしまっていた。アニメ好きの彼は、多少ロリコンな要素があるのだから仕方がない。

「そうだぞ日良。この変態が調子に乗るからやめろ」

 二人の言葉を聞いて、日良は羨ましそうに笑顔を浮かべた。楽しそうだと感じ、日良は本気で結婚を進めていた部分もあった。

「そんなに言わなくったっていいじゃないか。それに、男が変態で何が悪い」

 少し凹んだ、かと思ったら和輝は胸を張って言った。そんな言葉に様子に、その場にいた全員が一瞬は驚いた。

「ノンは悪いと思います! 変態は悪いです!」

 やがて再び必死の非難を始めようとした。しかし、咲希は違った。

「にゃははは。私はもう、そこまで言えればいいと思うぞ。ああ、面白い」

 咲希は、腹を抱えて笑い始めた。初めてだったからだ、こんな風に言う奴は。抑々咲希は、顔色を窺って来ない人自体殆ど会ったことがなかった。だからそうゆう奴が好きだったのだ。

「そういや、名前聞いてないんすけど」

 さすがに照れ臭くなり、和輝は頬を掻きながら言った。何とか少しでも話題を逸らそうと考えたのだ。

「そうでした? 私は山崎日良といいます。それで、彼女は坂井野乃花さかいののかです。あなたは、三村和輝様でいいんですか?」

 微笑みを取り戻し、日良は優しい声で名乗り始めた。

「えっあぁ、はい」

 頷いて、とりあえず日良と和輝は握手をした。するとそれに対し、野乃花が反応した。

「日良様! ノンの名前教えないで下さいよ! それに! こんな変態に触っちゃいけません! 変態がうつるから早く帰りましょう!」

 野乃花は無理やりに、日良を引っ張って出て行った。その姿を、和輝は見えなくなるまで眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ