ジュッキー
翌日和輝が目を覚ますと、隣に咲希が寝ていた。
「どぅっわ!」
驚きのあまり、和輝は起き上がりそう叫んでしまった。その声で、咲希も目を覚ましてしまう。
「……づひゃっ! 何でお前がいるのだ」
咲希は目を覚ました瞬間、布団から和輝を蹴り出した。
「痛っ。何すんだよ」
床に打ったお尻を撫でながらも、和輝は咲希の方を見る。
「私の部屋から出てけ、変態!」
なぜこうなったのか。話は先日に戻る。
それは咲希が自分の部屋で、眠りに付いたその後。
「あんたが、新人のジュッキーだっけ?」
和輝は、少女に話し掛けられた。
ギリギリ肩に掛かるくらいの、こげ茶色の髪。大きな瞳は黒く輝いている。真っ白で薄い布を身に纏っているが、かなり露出度の高い格好であった。和輝はつい、すらりと伸びる細い足に目を向けてしまっている。
「ジュッキー? まあそれよりさ、ここってどこなの?」
呼び名に不思議を抱きながらも、とりあえず和輝はこの場所を聞いた。そうすれば、自宅を見つけることが出来るかもしれないと考えたからだ。
「どこって? えっと、千葉県って言えばいい?」
和輝は、訳が分からなくなった。心のどこかでは、異世界や戦国時代を期待していたから。しかしそれなら、詳しく地名を知れば帰れるかもしれないと思った。
「……戦国時代だと思ったけど、千葉じゃ違うんか」
だがやはり、アニメ好きとしては少し残念という感想だった。
「何か言ったか? おい、そろそろ寝た方がいいぜ」
本当に意味の分からない子だなと、首を傾げた。和輝にそう思われるならば、相当のことである。
「疲れてるだろ? 早めに休んどけ。安心しろ、殺しはしないから」
その言葉に和輝は、優しい子だと認識した。とても騙されやすい性格なのである。
「ここが客用の部屋だ。にしし」
少女の言葉を素直に信じ、和輝はその部屋で寝た。
しかしその部屋は咲希の部屋であり、布団の奥には咲希が隠されていた訳だ。