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サクラのキセツ 陽  作者: 斎藤桜
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素直な心

「咲希ちゃん、大丈夫だよ。俺も走れる。慣れたから安心して」

 いつまでも背中にいるなんて、そう思って和輝は咲希に降ろすよう頼む。頷いて咲希は和輝をその場に立たせると、すぐにまた走り出した。

「変態、何やってるんですか!?」

 走っていた和輝の後ろから、襲い掛かろうとする人がいた。それにいち早く気付いた野乃花は、更に後ろに回り込んで切り殺した。咲希を悲しませない為に、已む無く助けたのだ。

 その体から出た液体は飛び散り、野乃花の左頬を真っ赤に染める。

 日良の領地まで逃げ延びたときには、もう野乃花の小さな体全体が赤黒く染まっていた。しかし野乃花はそんなことを全く気にも留めなかった。

「野乃花、大丈夫ですか?」

 さすがにその姿を見ては、日良も驚き心配に思う。城に入るとすぐに、日良は飛び出してきた。

「あっ失礼しました。咲希様、御無事で何よりです」

 そして咲希の方を見ると、深々と礼をした。駆け寄ってくる野乃花の頭を撫でながら、怪しく日良は微笑む。

「お前、どうゆうつもりなんだ?」

 いきなり睨み付けた咲希を見て、日良は本当に怒ってると思った。日良は咲希を恐れていたが、咲希のことを誰よりも大切に想っていた。助けようとしているのに、恐怖に負けて俯いてしまう。その様子を見た咲希は、更に怪しんだ。

「まあ咲希ちゃん、助けてくれたんだからいいでしょ?」

 そんな悲しそうな日良の様子を見て、和輝は咲希の手を掴んでそう言った。それは、どう頑張っても日良には出来ないことであった。

「ま、まあ……それも、そうだけど……。助けてくれたのは、礼を言うが……。てか変態、手を掴むな気持ち悪い!」

 咲希はまた怒っているような素振りを見せた。しかしそれは少女の可愛らしいものだった。それを見た日良は、本気で怒っている訳ではないと確信した。だから安心して、咲希に払われた和輝の手を掴んだ。

「ちょっ、日良様? 変態に触ってはいけませんってば、変態がうつります!」

 そして野乃花がその手も引き離した。少しして落ち着いた四人は、真剣に話し出した。

「深雪は? 一葉は? ……逃げられたのか? 他の皆も……。深雪が死んじゃったら、私は……」

 不安気な表情で、咲希は深雪の名を呟き続ける。

「咲希様の軍の者を皆救助できるように、一応使いを送ってはいますが……」

 日良も目を逸らす。そんな場面でも、彼は変態だった。

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