会議
「皆に紹介する。こいつは新入りの三村和輝だ」
会議室に集まると、咲希はいきなり叫んだ。
「よっしゃ、じゃあ会議始めんぞ。議題は……何処を滅ぼすか、だっけ」
元気にそうは言うが、咲希の表情は全然笑ってなんかいない。真剣そのもの、そんな感じだった。
「確かになんとなく合ってますけど」
苦笑い気味の一葉、しかし他の皆は咲希の可愛さに騙され掛けていた。咲希は和輝を座らせると、高々と宣言した。
「川上家をぶっ倒してえ」
これは、咲希の心からの言葉であった。しかし、叶わない言葉でもあった。
「「はあ?」」
川上家は、大国を築いていて、咲希の小国が倒せるような国ではない。それは咲希自身が一番理解していた。
「それはちょっと、調子に乗りすぎじゃあないでしょうか」
一葉の言葉に、皆が頷く。いくら咲希の可愛さにメロメロとは言え、冷静な判断くらいは出来る。
「えー。なら、慶喜殺してえ」
慶喜とは川上家の五代目当主で、女好きの変態だ。その上我が儘で、欲張りで評判も滅茶苦茶だった。咲希も以前拐われたことがある。
「人質にされるのは他にもあったけど、奴だけは、目的が違った気がすんだよな」
そのときのことを思い出し、咲希は自分で気分を悪くし掛けた。
「それは思いますが、力に差があり過ぎます」
倒したい、それは他の人だって思うことだ。しかし、倒せたいと言って倒せるような相手じゃない。
「えー、なんでー」
咲希は、可愛らしく頬を膨らませた。
「弱い国から消していきましょう」
可愛さに負けないように、冷静を保ちながら一葉はそう言う。
「そうだな。じゃあ高橋」
だから咲希は、吐き捨てるようにそう言った。
「え……、あっ。はい、私は賛成です」
高橋というのは、高橋雄大という男が当主の小国だ。雄大は臆病で慎重な性格で、他国との交流も殆どない。
「咲希様、奴はとても臆病。戦う必要も無いと思われます」
だから一葉は賛成した。勝利が完全に見えているから、笑顔で賛成したのだ。誰も反対意見を上げもしない。
「分かった。決定な! 私はもう寝る」
だから咲希はそう言うと、部屋を出ていってしまった。