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サクラのキセツ 陽  作者: 斎藤桜
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食事

「姫様、食事の準備が出来ましたよ」

 一葉の声がすると同時に、咲希は駆け出した。お腹が空いて、死にそうだったからだ。それに咲希まだは、食べること以外に楽しみを見つけられなかったから。

「お前も早く来い」

 楽しそうに咲希は和輝を引っ張って行く。連れられた和輝は、食堂に入った瞬間ポカンとしてしまった。豪華な食事が大量に並べられていた。そして大勢の人々が、幸せそうにそれらを頬張っている。

「食いながらお前の話を聞く。お前も食っていいぞ」

 咲希は早速食べ始めた。パクパク物凄いペースで食べながらも、質問をしていった。

「なんだ? その服」

 まず、最も不思議だった点を問い掛けた。和輝が身に纏う衣服は、咲希にとって初めて見るデザインだったからだ。

「制服ですけど」

 しかし和輝にとってはごく普通のもの。何が可笑しいのかと、こっちはこっちで疑問を感じていた。

「へいふく?」

 咲希は、懸命に料理を頬張りながらも首を傾げた。

「あの、戦争ってマジっすか?」

 今度は和輝が疑問を問い掛けた。

「マジ? 何だ? それ」

 二人は、訳が分からなくなった。互いの常識がずれている為、互いに伝えたいことすら分からないからだ。

「一葉。こいつ、ヤッパ面白い。我が軍に入れよう」

 しかし咲希は嫌いじゃなかった。不思議な存在、面白い存在。それを咲希はどんどん取り入れていく、そんなやり方だった。

「そんな、何者かも分からない奴」

 それは一葉にとって、心配で堪らないやり方であった。咲希も分かっていたが、面白いことが大好きで止められなかったんだ。

「決定だ。お前もいいな?」

 そして咲希は、反論を許さない。否定意見を聞かない訳じゃ無い、自分の考えを曲げない訳でもない。ただ、反論を許さないのであった。

「んん? でもお前、どこの人だ?」

 どこの意味を、和輝は住んでいる住所だと取った。

「茨城け」

 だから素直に住所を答えようとした。のだが、それは咲希の言葉に遮られた。

篠崎しのざき玲奈れいなのところか?」

 一番咲希が嫌だと思う、最悪の場合を問い掛けた。

「玲奈?」

 しかし和輝はそれにも首を傾げていたので、咲希は少しだけ安心する。玲奈というのは咲希が嫌う少女で、彼女の家来は彼女のことになるとすぐ怒る。

 怒らないのでは、仕えていない。仕えていないのなら、使者という心配はないということ。そんな結論に辿り着いたからだ。

「まあ、どうでもいいか。これからは、私の物だからな」

 だから咲希は、「にゃはは」と笑い魚を銜えた。誰もが惚れてしまうほど、その姿は可愛らしかった。

「お前、気に入った。私の傍に居てくれよ」

 和輝の方を向くと、今度は美しく微笑んだ。その可愛さと美しさに、和輝は見惚れてしまっていた。

「姫様、そろそろ会議です」

 暫くすると、時計を見て一葉がそう告げる。

「分かった。和輝も連れて行くな。皆に紹介する」

 箸を置いた咲希は、立ち上がって真面目な顔に切り替えた。

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