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サクラのキセツ 陽  作者: 斎藤桜
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高橋雄大

「降伏しろ。そうすれば全員許してやる。誰も殺さない」

 案内された部屋に行くと、咲希はいきなりそう言った。普通の領主は、こんな話に乗ったりはしないだろう。

「咲希殿、本当ですか? 本当に誰も殺さないでくれるのですか? ならば、降伏致しましょう。玲奈殿よりも、良さそうですし」

 しかし、雄大は頷いたのであった。咲希の優しさも知っているし、何より彼は上に立つことを好まなかったからだ。雄大が言った玲奈という言葉に、咲希は少し反応した。

「玲奈がどうかしたのか? ……まあ、いいや。じゃあ、私は帰る。ここはお前に預けておくが、いいな?」

 興味ないとでも言うように、咲希は部屋を出て歩き出した。

「咲希殿、ありがとうございます」

 雄大は咲希に深く礼をした。咲希が見えなくなっても、彼は頭を下げ続けていた。咲希は軽く手を振り、城を出て行った。

「姫様、予想以上に簡単にいきましたね。次はどうなさいます?」

 正直一葉は驚いていた。いくら臆病な性格とは言っても、ここまですんなり渡してくれるとは思わなかったからだ。

「豚を殺しに行く」

 一葉の質問に、咲希は低い声で答えた。元気な表情を完全に消し、咲希の表情は真面目そのもの。

「豚ってどうゆうこと?」

 咲希に『豚』と呼ばれている人間のことを知らない和輝は、そう問い掛けた。

「デブで太くて重くて太ってる野郎だよ」

 可愛らしくも咲希は、説明する為に息をいっぱい頬に溜めて見せた。しかし咲希がどんなに頑張ったって、太っているようには見えかねていた。

「姫様……。そんなこと言ってはいけません。まあ、林太りんた殿と言う判断は良いのでは?」

 小森こもり林太は、咲希の言う通りとても太っている。いつも強気で贅沢を尽くしている上、滅茶苦茶な政治な為に民からの評判は最悪だ。

「一葉、私は一言も言ってないぞ。豚とは言ったが、林太とはなあ」

 性格悪くも、わざと咲希はそう言って見せた。しかし咲希の可愛らしい悪戯程度だって、一葉も理解していた。だからちゃんとそれに笑顔で反応したのだ。

「い、いや! それは姫様がそう呼んでおられたから……林太殿の事かな、と思っただけです」

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