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正宗・困惑

「……けど、なんで今になって連絡を取ってきたのか……あ」

 

 俺は、ヘンなことをひらめいてしまった。

 

 鏡子叔母さんが、なぜ、今になって、高原家に暁斗を預けようとしたのか、その訳みたいなの。

 

 

 恐らく……暁斗の出す邪気にようなものに気付いていたんだろう。

 

 

 それを、何とかしなくてはいけないけど、鏡子叔母さんは、もう時間がない。こういったことを理解し、なんとか出来るのは、皮肉にも避けていた実家しかない、とそう思ったんじゃないだろうか。

 

 

 うーん。確証がない。何か遺書みたいなのがあれば分かるのかな。

 

 

「……とにかく、まだ、よく分からないよな…… 暁斗もおいおい、うちのこと知ってけばいいよ。あ、そうそう、うち酒屋もやってるだ。神社と酒って、つきものだけど、売るのってどうよ、って思わん?」

 

 暁斗はうなずきつつも「?」という顔をしている。そりゃ、そうだろう。いきなり話をそらせたんだから。

 

 

 

 骨ひろいまで、あっさりとすんだのは、人数が少なかったからだ。

 神道の家の娘が、仏教式の葬式であの世に行く。墓は、夫のほうに入るらしいから問題はないだろう。

 

 

 

 暁斗は異常なほど淡々としていた。

 悲しみとか、気が抜けた、とか、そういったそぶりは見られない。ただ何か、不安定な気が感じられた。

 

 

「後のことは心配しないでいいから。今日はゆっくり休みなさい」

 

 父は暁斗にそう言って、おだやかに微笑んだ。こういったコトは、さすがマイルド・エクソシストと言われるだけのことはある。厳しかったじっちゃん、ならこうはいかない。死んでてよかった。(じっちゃん、ごめん)

 

 

 未成年の暁斗は、おそらくうちで引き取ることになるのだろう。未成年後見人などの手続きを、父は考えているハズだ。

 

 

 暁斗には気の毒だけど、一緒に暮らせるとしたら、俺としては、かなり嬉しい。一人っ子だった俺は、兄弟が欲しかったんだ。イトコだって血がつながってるんだから、兄弟みたいなもんじゃん。

 

 

 部屋は、どうするんだろう? え、客間をつぶすのかなあ、納戸は、ちょっと狭すぎだし、美剣士・暁斗くんには似合わない。もしかして、俺といっしょの部屋?! そ、それは、ちょっと照れるっしょ? 男ふたりは、狭いしさー 暁斗が絶対に嫌がるだろうし。

 

 

 とかとか。

 

 俺はウカれていたのに、暁斗のやつ。

 

 

 

 

 

 いなくなったーーーーー!!

 

 

 

 ほんと、行方不明。

 

 叔母さんの初七日もまだなのに、連絡がぷっつりととぎえたのだ。自宅にもいない。学校にも行ってない。未成年だし、心配だから、警察にも捜索願いを出した。が、見つからない。

 

 

 安心した唯一の情報は、暁斗は学校の担任に、みずから「当分、学校は休む」と連絡をしてきた、という事実だけだった。

 

 

 それだけで、事件に巻き込まれたのではない、とはいえないが…… いったい彼に何が起こったというのだろう。

 

 

 オレと父は時々、暁斗の自宅の周辺をチェックしたり、近所の人に親戚だから暁斗を見かけたら連絡してほしい、と電話番号を渡したりしていたが、こちらも、手がかりはあがらなかった。

 

 

 そうして一ヶ月ほどたった頃、暁斗から電話が入った。自分は元気にしているから安心して欲しい。だが、探さないでくれ、とそういう内容だったらしい。

 

 

 らしい、というのは、俺は学校に行っている時間で、父は外仕事中だったため、母が電話を受けたからだ。

 

 

「……きしょー、暁斗のやつ。こっちがこんなに心配してるってのに!」

 無性に腹がたったが、元気で生きて何とか生活してるのだな、と確認できたので一安心した。

 

 

 そうして。

 何ヶ月かが過ぎた。

 

 

 俺は気の導引を続けていたので、今回の恐慌状態も、かなり落ち着いていられた。導引っていうのは、呼吸法と体の動きをあわせたもので、体の中に気をめぐらせて滞りをなくすトレーニングだ。

 

 

 道と名のつく武術は、気をめぐらせることは必須だ。剣道や居合いをしている俺は、こういった練習にもかなりの時間を費やしていた。

 

 

 人間は日々の感情やストレスで、かなり気が乱れる。

 

 特に現代人は乱れる要素がいっぱいなのに、整える方法を知らないので、今、あちこちに弊害が出てきている。

 

 

 

 俺は導引で気を落ち着けつつ、イメージ法をつかい、暁斗とはそのうち会えるだろう、という確信のもと、日々を送った。

 

 

 夏も本番となり受験勉強にも力を入れだした。ときどき気分転換に、酒屋の配達やら集金やら、家の手伝いもしていた。

 

 

 そんな時。暁斗に会ったのだ。夜の盛り場で。

 


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