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第9話 疑い

登場人物


怪力男 (カイリキオトコ) 32才


トンネルの中で いきなりフーゴに殴りかかってきた男。何故襲ってきたのかは分からないが…おそらく何か理由がある。一度殺したと思ったツバサに返り討ちにされた…その後は1人でどこかに行ってしまったようだ…

だが…《当たり》が何か関係しているとは分かっても…その当たりが一体何なのか分からなければ 真相を掴めそうにないな…


その当たりというのは 人を殺してまで手に入れる価値のあるものなのだろうか…?


だとしたら 一体どんなものだ…?


僕には想像もつきそうにない…


サオリさんに直接聞いてみようか…?


だが 素直に教えてくれるだろうか?…


そんな事を考えていると…


コツコツコツ…と誰かの足音がした…出口の方を見ると そこにはマサヤがいた。


女の子のいう通り マサヤが帰ってきた…出任せで言ったわけではなかったようだ…本当に耳が良いのだろう…


『マサヤさん…どう…だった?』


と 少しぎこちない感じでサオリさんが聞いた。


『残念だが男の姿はどこにも見当たらなかったな…』


と マサヤが答えた。


もし男を見つけたら どうするつもりだったのだろう…?…


僕は男が見つからなかったと聞いてホッとした。


『で?…コイツらはどうする?』


と マサヤが僕らを見て言った。


『とりあえず…みんなの所に連れて行きましょ…多分この子らは はずれだと思うし…』


と サオリさんが言ってくれたが…


面と向かって はずれだと思うって言われると 何か腹立つな…僕は少し不快な気持ちになった…


『はずれって何だ?』


ツバサがすかさず聞いた…が…


『……』


サオリさんはシカトした。


『ほ~』


そうくるか と言わんばかりにツバサがうなずいた。


サオリさんまで無視するとは…多分マサヤに口止めされているのだろう…


だけど…みんなの所に連れて行くと言うことは…他にも仲間がいるということか…


その仲間に会わせてくれるという事は…それなりに僕らを信用してくれたのだろうか…?


………


てか この人達の目的は一体何なんだ…?…やっぱり《当たり》を見つけること…?…


『つかオメーらの目的は何なんだ?』


ツバサが気になる事を聞いてくれた。


どうやらツバサとは意見が合うらしい…


『お前らには言いたくない』


マサヤがキッパリと答えた。


『お前ムカつくな』


ツバサは正直に言った。


『……』『……』


二人の間に変な間がうまれた…


『とにかく…みんなの所に行きましょうか…?』


サオリさんが二人の変な空気を洗い流すように言った…


どうやら…ツバサとマサヤさんは性格的に合いそうもない…


僕もマサヤさんは少し苦手だなと思う…明らかに僕らを敵対している…仲良くなれる気がしない…


『死にたいのか?…』


マサヤさんがツバサに言った。


『お前がな』


ツバサも負けじと言い返した。


『今ここで消してやってもいいんだぞ?…』


『消えるのはお前の方だけどな…』


『お前…自分の立場が分かっていないみたいだな…』


『ちゃんと分かってるって…俺はお前より強い…それだけだ』


『お前いくつだ?…』


『俺?…19だけど?……何か問題でも?』


『俺は31だぞ…分かるかこの立場の違い』


二人の低レベルな口喧嘩がはじまった。


この戦いは 長くなりそうな気がする…


だけど この低レベルな 口喧嘩を聞いて…マサヤさんは 本当は良い人なんじゃないかと僕はひそかに思った。


『殺すぞ…?』


『え?…コロスケ?』


この超絶バトルはいつ終わるのだろう…?…と見ていると…


『…もういいッ!!』


ついにマサヤさんが折れた。


『こんな事をしていても時間の無駄だ!!行くぞッ!!』


と言うと マサヤさんはズカズカと1人で歩いて行ってしまった…


『へッ!…』


ツバサは少し勝ち誇った様子だった…


サオリさん達はマサヤさんを追いかけるように歩き出した…


僕もツバサの肩を借りながら 片足で歩き出すことにした。


………


僕らはトンネルの先に出た…トンネルを出てみると…外はもう明るくなりはじめていた…この世界でも ちゃんと時間は流れているみたいだ…


外の明るさを見る限り…今の時刻は朝の6時すぎといったところだろうか…


明るいところに出たということもあり…僕はツバサに一旦立ち止まってもらい…恐る恐るさっき折られた自分の右足を見た…


見た感じ足が変な方向に曲がっているという事はなかった…


僕はさらにビビりながらも 右足のズボンの裾をめくってみた…


あれ…?…思ってたより酷くはないな…


足には大きなアザがあったが…僕の想像していたものよりは全然マシだった…


僕の足はもっとグチャグチャになっているもんだと思っていたが…足の容態は思ったより たいしたことはない…


僕の足を折った男の腕が コンクリートを拳で砕いても無傷でいられるほど丈夫なように…僕の足もそれなりに丈夫なのだろうか…?


だとしたら僕のキックは あの男のパンチのようにコンクリートを砕くほどの威力があるのかもしれない…僕はちょっとワクワクした…


…でも あの時…僕は自分の足の骨が砕かれる音を聞いた…


………


たしかに足は折れてはいるが…ほとんど治りかけているようにも見える…これならすぐに完治しそうな気がする…僕は自分の能力に感謝した。


『思ったよりたいした事ないな…良かった』


と ツバサが僕の足を見て言った。


『ああ…僕の足はそれなりに丈夫みたいだな…』


と 僕は返事を返した。


殴られたのが足で本当に良かった…腹でも殴られていたら確実に死んでいただろうし…


『あなた…足 怪我してるの?』


と サオリさんが僕に聞いた。


『はい…まぁ…一応…』


僕は微妙な返事をしてしまった…


すると…


『マサヤさーん!』


サオリさんがマサヤさんを呼んだ…


何でアイツを呼ぶんだよ…と僕は思った。


不機嫌そうな顔をしてマサヤさんが振り返った。


『…どうした?』


マサヤさんはサオリさんに尋ねた。


『この子 怪我してるみたいなんです…』


と 僕を見てサオリさんは言ったが…


マサヤさんはツバサを見た…


『おいお前…その背中のヤツは何だ?』


と マサヤさんが言うと…


ツバサは今まで開いていた背中のヤツをスッと閉じた…


閉じたその背中のヤツは 僕がはじめてツバサの背中を見た時と同じ状態になっていた…


何だこれ…?…収納機能もあるのか…便利だな…と僕は思った…


『背中のヤツって何だ?』


ツバサはとぼけた表情で言った。


『いや今何か出てたろ?…お前一回後ろ向け…』


マサヤさんは少しイライラした様子で言った。


『幻覚でも見えたのかな…?…シャブのやり過ぎなんじゃないですかね?…』


ツバサはあくまでもシラをきる。


『さっきはトンネルの中が暗かったから気が付かなかったが…それは何だ?…隠し事はするなよ…』


マサヤさんは怖い顔をして言った。


『隠し事をしてるのは お互い様だろ?…お前が全部しゃべってくれれば 俺も教えてやるよ』


ツバサが良い事を言った。


そっちが隠し事をするんだったら…こっちも教えてやる必要はない…その通りだと僕も思った。


『………』


マサヤさんは黙ってしまった…どうやらツバサの方が一枚ウワテだったようだ…


『そういえばお前…まだ名前聞いてなかったな?』


と マサヤさんがツバサに言った。


『人に名前を聞く時は自分から名乗るもんだぜ…』


と ツバサは言った。


『まぁそうだな…俺の名前はマ…』


と マサヤさんが自分の名前を言い終わる前に


『マサヤだろッ!?知ってんだよバーカ!!』


と ツバサが言った…と ほぼ同時にマサヤさんが すかさず ツバサに頭突きをした!!


ゴンッ!!…その音は僕らにも聞こえるほど大きかった…


『いッてぇ!!ありえねー!!』


頭を押さえながら ツバサが叫んだ。


その姿を見て サオリさんの隣にいる女の子が笑った。


正直 自業自得な気がする…ツバサ自身も自業自得だと思ったのか…やり返そうとはしなかった…


『そうだ…みんなで自己紹介しましょう!』


と サオリさんが言い…僕らはそれぞれ自己紹介をすることになった…


…いつの間にか…僕の足の怪我のくだりはなかった事にされているが…まぁ人生こんなもんだろ…?…僕は無理やり納得した…


………


僕とツバサはそれぞれ自己紹介をし終わり…他の人の自己紹介を聞いた。


………


サオリさんは東京で働いている普通のOLらしい…年齢はいくつだろうと…少し気にはなったが…聞きはしなかった…


マサヤさんは千葉出身の とある雑誌の記者らしい…街中でこの人がインタビューやアンケートをとったりするのかと思うと…僕は少し怖かった…


最後に サオリさんのいつも隣にいる 女の子の名前は 千尋というらしい…埼玉出身の中学生だと言う…この中では一番最年少という事になるな…




みんなの自己紹介を聞いて僕は思った…サオリさんは東京…マサヤさんは千葉…チヒロちゃんは埼玉…ツバサは静岡…そして僕は神奈川…と…出身地が皆バラバラだ…


…不思議な感覚だった…みんなわけも分からずこの世界に来て…出身地がバラバラの ほとんど共通点のない人間が集められている…そう思うと…余計に気味が悪かった…


これが本当に夢の中なら…犯人はもちろん超能力者だろう…それもかなりの強者だ…この世界に僕ら全員を連れてきたぐらいだ…ただ者ではない…


犯人は1人で僕らを夢の中に連れてきたのか…いや…1人とは限らない…犯人は複数いる可能性だって十分にある…


…いや…そもそも犯人なんていないのか?…自然現象…?…う~ん…それはないか…これが自然現象なんてありえないよな…?…


となると…やはり黒幕が必ずいるはずだ…


僕は気が付いた…


マサヤさんが言う《当たり》というのは…この夢の中に僕らを連れてきた黒幕の事をさしているんじゃないだろうか…?


その黒幕を倒せば…現実の世界に帰れる…そう考えているんじゃないか…?


だとすれば…その黒幕を倒すまでは現実には帰れない…だけど黒幕が僕らと一緒に夢の中に潜んでいるとも限らない…それにいたとしても…犯人が複数いる可能性だってある…


1人を倒したところで…帰れるとも限らない…


それに黒幕と言っても…ソイツは恐らく僕らと同じ人間だ…その人を見ただけでは 黒幕かどうか判断はつかない…


もし僕らの中に紛れ込んでいたとしても…分からないわけだ…


黒幕は僕らの中にいても…おかしくはない…


なんの根拠もなかったが…しばらくそんな嫌な考えが 頭から離れなかった…

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