第7話 絶望…希望?
あの時と同じだ…僕は信じられないスピードで走った!!
『な 何だッ!?カエル野郎?…』
男は驚いてすぐに身動きがとれず その場に立ち尽くし ただ僕を見つめることしかできない。
『うるせぇ!!この人殺し野郎ッ!!』
僕は男に怒声を浴びせながら そのまま男に向かって突っ込んだ!!
ドォーン!!…今までにないくらいの大きな音がトンネルの中で鳴り響いた。
僕はすごい勢いで男を壁に叩き付けたようだ…
見ると 男が壁に少しめり込み 頭から血を流していた…
やり過ぎたか…僕は不安になった…
今 僕は全速力でこの男に体当たりをした…あの時と同じなら およそ80キロくらいのスピードで僕は男にぶつかりそのまま壁に叩き付けたことになる…
時速80キロというと…高速道路で走る車と同じぐらいの速度だ…
つまり 高速道路で走る車に引かれたのと同じぐらいの衝撃があったのかもしれない…
普通死ぬよな…?…高速道路じゃなくても…一般道路で車に引かれても…人は死ぬことがあるのに…
ましてや高速道路なら確実に死ぬんじゃないのか?…
僕はその場で後退った…
むしろ後悔したのは僕の方な気がする…
僕は助けを求めるようにサオリ達を見た…
サオリは ぷいっと横を向いた。
何だよそれッ!?…私には関係ありませんってか!?…ふざけんなよッ!!…
僕はサオリに軽く失望した…
すると
『痛てェな…クソ野郎…』
男が壁から剥がれ出てきた。
男は生きていた。
僕はホッとした…だが素直には喜べなかった。
コイツはツバサを殺したんだ…許す訳にはいかない。
だが…もういい…これ以上この男をどうこうするつもりはない。
男は僕を睨み付けて
『今殺してやるから そこでジッとしてろ』
と言った。
『…僕は殺し合うつもりはないし…これ以上傷つけ合うつもりもない…もう帰ってくれ…どこかへ行ってくれ…』
と 僕は言ったが、
『何だよ…勝ち逃げか?…俺はお前をぶん殴らねぇと気がすまねぇ…』
と男は言い、ふらふらと僕に近づいて来る。
『勝ち逃げ?…僕は仲間を殺されたんだぞ…とても勝った気にはなれない…むしろ負けたんだ…』
と僕は男に言ったが…へらへらと笑っているだけで反応はない。
『僕は一度あんたを本気で殺したいと思った…でもあんたを殺したら…僕はまた後悔すると思う…だから僕はこれ以上争うつもりはない…』
と僕は男に再び言った…
が…男は
『お前に俺を殺せると思ってんのかッ!!』
と 怒鳴った…どうやら余計怒らせてしまったらしい…
どうすりゃいいんだよ…僕に謝れっていうのか…?…いや…僕が謝るのはおかしいだろ…?…だったらどうすればいい…?…どうすればこの男を止められるんだ…
そんな事を考えているうちに…男が僕の目の前にやって来た。
男は僕に掴みかかろうとした。
僕はとっさに後ろへと跳び上がった…
…が…空中で右足を掴まれてしまった。
『やべッ!!』
メキキ…足首の骨がしなる音がした。
僕は右足を持たれたまま 体ごと地面に叩き付けられた!!
『ごほォッ!!』
まずい…殺される…
僕は助けを求めようとサオリ達の方に目をやった…が…サオリ達の姿はない…
ふと トンネルの奥の方を見ると…サオリと女の子が走って逃げて行く後ろ姿が見えた…
あいつらマジかよ…僕を見殺しか…
まぁ元々仲間というわけじゃなかったし…こうなるのは当然なのかもしれないが…人としてどうなんだ?…あいつらに良心はないのかよ…僕は泣きたくなった…
『この足か…この足がなけりゃ…』
男はそう言うと、拳を高く振り上げた…かと思うと
そのまま僕の右足に殴りかかった!!
ボギャァッ!!!!…
僕は自分の足の骨が砕かれる音を聞いた…
あまりの衝撃にほとんど痛みすら感じなかった…足の感覚がない…
僕は自分の足を見る勇気がなかった…
『うわあああああああああッ!!!!!!』
僕は叫んだ!!…このままじゃ殺される…
僕は逃げようとしたが…足に力が入らない…それに逃げようにも 男は左手で僕の体を押さえ付け 身動きすらとれなかった…僕の力ではどうすることもできない…
『誰か…誰か助けてくれッ!!!!』
僕は必死に叫んだ!!…だが 誰も答えてはくれない…
…僕の人生…こんなんで終わりかよ…
『もう片方の足もいっとくか…』
悪魔のささやき声が聞こえた…マジかよ…
こんなクソ野郎に僕は殺されるのか…ツバサもコイツに…
僕は何気なく ツバサが倒れている方に目をやった…
が…そこにはツバサの姿はなかった…
あれ…?…ツバサは?…
男はまた高く拳を振り上げた…
すると そのまま僕の左足に向けて 降り下ろす!!
『う うわあああああッ!!!!』
僕はもう駄目だと思い 目をつぶった…
ドコォッ!!…
足が砕かれた時とは違う音がした…
僕は恐る恐る目を開けて…自分の足の方を見た…
そこには何か奇妙な物体が 僕の足をかばっているように見えた…
何だこれ…?
よく見ると僕の足元に誰かが中腰でかがんでいる…
僕の足をかばった奇妙な物体は 僕の足元にいる人の背中から生えているみたいだ…
僕はその人をよく見た…
…………
僕はその姿に見覚えがあった…
そこには上半身裸の男が立っている…僕はその姿を見た途端 涙がこぼれた