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第6話 殺意

登場人物


沙織 (サオリ) 28才


東京で働いている普通のOL。なかなか頭の切れる頭脳の持ち主だが、動揺すると何もできなくなる。暗いトンネルの中で ツバサの後頭部に銃を突き付けたように見せ掛けるトリックを使った。

誰なんだよコイツ?…化け物?…力半端なさすぎ…つか何で僕を狙うんだよ?…


…もしかしてサオリ達の仲間?……コイツがマサヤか?


『素早いな…このネズミ野郎』


男は僕を見下ろしながら言った。


すると 男は壁から腕を引き抜き すかさず しゃがんでいる僕に殴りかかった。


僕は直ぐ様 立ち上がると同時に上へと跳んだ!!


『ぉおッ!!』


僕は やはりあの時と同じように 10メートル近い高さまで跳び上がった。


『と 跳んだッ!?』


サオリの驚く声が聞こえた。


ああ…やっぱ跳べちゃうんだ…と一瞬思ったが、このジャンプ力がなければ 僕は死んでいたかもしれない。


ドォン!!…男の腕が地面に突き刺さり、大きな音がまたトンネルの中で鳴り響いた。


あまりにもすごい力の為、途中でパンチを止めることができないのだろう…


僕は男の背中の上に着地し、直ぐ様トンネルの反対側の壁ぎわまで逃げるように跳んだ。


向こう側に跳んでいる最中 下の方で


『おお~すげ~』


とツバサの感心している声が聞こえた。


だが 僕は勢い余ってトンネルの壁に体ごと激突した。


『痛てぇッ!!』


めちゃくちゃダサい…やっぱカッコつかねぇ…


それでもツバサは


『おお~すげ~』


と感心していた。


『…ウサギ野郎……いやカエル野郎か』


暗くて顔までは見えないが、男はヘラヘラと笑っているようだった。


戦う?…逃げる?…と頭の中で一瞬考えた…


…が…正直 僕にこの男を倒せるとは到底思えない…


一発でもパンチを喰らえば そこで僕の人生は終了…間違いなく死ぬだろう…


…死ぬ?……でもサオリが言うにはコレは一応 夢の中なんだよな?…僕のじゃない誰かの…


ここで死ねば 僕は現実に帰れるんだろうか?…


この男のパンチを受ければ帰れる…?……


怖い…めちゃくちゃ怖い…てかコレはただの夢じゃないんだ…痛みもリアルに感じる


無理無理無理無理…やっぱ超怖い…帰りたい…


どうせ死ぬなら もっと楽な死に方があんだろ?…馬鹿かよ…


…つか 死んだら帰れるなんて考えはやめよう!!なんか色々と間違ってる気がする…もっと別の方法があるでしょ?…


それに実際に痛みは感じるんだから…殴られた痛みのショックで…現実の僕も死ぬんじゃないか?


うん…きっとそうだ!!


…実際に痛みを感じるということは…現実の僕の体とリンクしているということ…つまりこの世界で死んだら 現実の僕も死ぬ…うん…なんかそれっぽいな…合ってんじゃないか?


となれば 僕のやるべき事は 今すぐこの男から逃げることだ。


もちろん逃げるといっても ツバサを置いていくわけにはいかない。ツバサと一緒に走って逃げよう…ツバサにその事を伝えなければ


『ツバサ逃げるぞッ!!』


僕はツバサに言った。


『えっ?逃げんの?』


ツバサは今のこの状況を理解できていないようだった。


『とにかくトンネルの出口に向かって走れッ!!』


と 僕が言い終わるか言い終わらないか という瞬間に


ドコォッ!!


ツバサがまるで人形のように4、5メートルほど吹っ飛んだ…


突然の出来事だった…


男のヘラヘラとした笑い声が聞こえた気がする…


ツバサはうずくまったような状態で倒れた…すぐに起き上がってくるんじゃないかと僕は期待した…


が…ツバサはピクリとも動かなかった…


『ツバサ?』


僕はツバサに呼び掛けてみた。


返事はない…


まさか……



…死んだ…?…嘘だろ…!?


暗闇でよくは見えなかったが…ツバサはあの男に殴られたようだった…


コンクリートが砕けるほどのパンチだ…まともに受ければ助からない…


…僕はツバサを見た…さっきまでしゃべっていたのに…今はもうしゃべらない…ツバサはもう動かない…



僕のせいだ…



僕がもっと早くツバサに逃げろと伝えていれば…ツバサは死なずにすんだかもしれない…


時間を戻せるなら戻したいと本気で思った…ほんの数分戻すだけで…ツバサを助けることができるのに…今の僕には後悔しかなかった。


…………


…そうだ…コレは夢なんだよ…ツバサは死んだんじゃない……現実に帰っただけだ……今頃ベッドの上で目を覚ましていることだろう……僕はそう信じたかった…



大丈夫……大丈夫……僕は自分に言い聞かせた。



冷静になれ…今はあの男から逃げなくてはならない…


…たとえツバサが死んだとしても…僕はツバサを置いていくつもりはない…ツバサを背負ってでも一緒に逃げるつもりだ…


僕はあの男を見た…男が歪んで見える……気が付くと僕は泣いていた。


こんな僕でも他人の為に泣くことができるのか…いや…もはやツバサは僕にとって他人ではなかったのかもしれない…


さっき出会ったばかりだが…いつの間にか情がうつっていた…


……気が付けば道路の上にいた…ここがどこなのかすら分かっていない…ツバサは僕と同じだった…


僕の中で仲間意識が強くなっていたんだと思う。


僕は涙を拭って男を見た。


男は自分の腕を擦りながら ふらふらとツバサの方に近づいて行く。


『う~ん…はずれか…』


男は倒れているツバサを見て言った。


はずれ…?…どういう意味だ…?


『まぁこの力があれば簡単に人も殺せるみたいだ…俺は特別なのかもな…お前らとは違う』


今度は僕とサオリ達を順々に見て男は言った。


サオリは怯えているようだった…体も震えている。後ろにいた女の子は サオリの背に隠れている…


どういうことだ…仲間じゃないのか?


『跳ぶだけしか能のないお前とは違うんだよ…このカエル野郎』


僕に指を差して男が笑う。


何なんだこの男…自分の力に酔いしれているのか…?


さっきツバサを見て はずれか と言ったが…アレは何なんだ?…


それに この力があれば簡単に人も殺せるみたいだ…とも言っていた。


まさか自分の力を試したいが為に ツバサを殺したんじゃないだろうな?…


僕の中でとてつもない殺意が生まれた。


『次はお前な…』


と 男は僕に指を差しながら言った。


やってやる…僕はもう逃げることなど忘れていた。


この男を殺してやりたいと本気で思った。


僕のやろうとしている事は間違っている…だが許せなかった…それにこの男を野放しにしておくわけにはいかないとも思った…だけど…


僕はツバサを見た…


また目に涙が浮かんだ…


ちくしょう…ちくしょう…ちくしょう…ちくしょう…


僕はまた涙を拭って男を見た。


男は僕に向かって歩み寄って来る。


僕は決めた…


殺しはしない…だけど後悔させてやる…痛みを教えてやる…


僕は男に向かって全速力で駆け出した!!

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