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第4話 人質

登場人物


翼 (ツバサ) 19才


上半身裸の高校生。高校2年の時、ほとんど学校に行かず、ろくに勉強もしなかった為、一年留年してしまった…今は高校3年生。背中には何故か肉なのか内臓なのかよく分からない歪な塊がついている…。あまり常識のない性格だが、正義感は誰よりも強い。

『お前大丈夫かよ…』


僕は心配になった。このままでは ツバサ もあの女と同じように 死んでしまうんじゃないかと思ったからだ。


『まぁ大丈夫…別に痛くないし…』


ツバサ は言った。


『大丈夫って言っても…全然大丈夫そうに見えないぞ…病院行った方が良くねーか?』


僕はツバサ に病院に行くよう言った。


『うん…そうだな…』


ツバサは さっきより元気がないように見えた。


『…でも病院ってどこにあんの?』


ツバサが僕に聞いた。僕はツバサに病院に行くよう言ったが、ここがどこなのかも分からないのだから 病院に行こうにも行けるはずがない。


『う~ん…困ったな…』


こういう時は もういっそのこと救急車を呼びたいところだが、携帯は使い物にならなかったし 周りに公衆電話もなければ ひとっこ1人いない。


『とりあえず そうだな…人を探そう。誰かしら人を見つければ その人に救急車を呼んでもらえばいいし、ここがどこなのかも分かるだろ』


とにかく人を見つければ 警察も救急車も呼ぶことができる。今のこの奇妙な状況を打破するには それしかないと僕は思った。


『その前にツバサ…お前寒くないのか?そんな格好で長いこといたら凍え死ぬぞ…』


『ん?俺は平気…この背中についてるヤツ、結構熱を持ってて熱いんだ…そのおかげで裸でも寒くないよ』


『なんだよそれ…暖房効果もあるのか…便利だな』


と 僕は冗談で返したが、心の中では心配で仕方がなかった…あの女は背中に火傷のような傷があって死んでいた。ツバサの背中についているヤツは熱を持っていて熱いらしい…


熱=火傷。僕にはあの女の背中の傷と、ツバサの背中のヤツが、何か関係があるような気がしてならなかった。


『人を探すと言っても、まずどこに向かって探しに行くかだな』


ツバサは言った。


『僕は向こうの方から道路沿いに走ってここまできたんだけど…ここに来る途中 数台走ってる車を見かけただけで…あの女以外 人の姿は見かけなかったな。それにここに来る途中 建物なども特になかった…道路の両側には大量の木や草がしげっているだけだ』


ちょっとセリフ長いな と思いながらも僕はツバサに説明した。


『ふ~ん なるほど…まぁあんたが来た道を戻ってもしょうがねぇし、このまま先に進もうぜ』


まぁツバサの言う通りだ。僕も今来た道を戻る気はしないし、このまま道路沿いに進んで行けば やがてどこか人のいる場所にたどり着けるはずだ。


とにかく後戻りするより 先に進みたいという気持ちの方が強かった。それが正直な意見だ。


僕らは歩いて先に進むことにした。


またすごいスピードで道路を走ってやろうとも思ったが、ツバサの背中のヤツがなんなのか分からないし とにかくあまり刺激になるような行動はとらない方がいいだろうと僕は思った。


それにツバサが僕みたいに人間離れしたスピードで走ったり 跳んだりできるのかどうかも分からない。


もしできなかったとしたら ツバサは僕を見てどう思うだろう?…やっぱり怖いと思うだろ…僕があの女をはじめて見た時と同じように…


今は普通の人間のふりをしておこう…いや…僕は今でも自分を普通の人間だと思っている。


あれはもしかしたら奇跡が起きただけかもしれないし…


人間 極限状態に追い詰められた時、信じられない力を発揮するっていうしな…そうだ…そういうことにしておこう…今走ったら 普通の速度で走れるだろう…きっとそうだ


…。


てか なんで僕はこんなにも普通の人間でありたいと必死なんだ…まるで妖怪にでもなったみたいだな…そんなに深刻に考える必要はないんだ…僕は自分に言い聞かせた。


『おい あんた顔色が悪いぞマジで…大丈夫か?…つかスゲー真顔すぎ…なんか怖いって(笑)』


ツバサが僕を見て笑った。


この男は相変わらず率直だ…まぁ素直なだけなのかもしれない…悪い奴じゃないということは分かる…もしかしたら この場を なごませようと言ってくれただけなのかもしれない。


今思うと 僕が考え事をしていたせいで、長い間 沈黙が続いていた…そのせいで ツバサに気を使わせてしまったようだ。


なんだか申し訳ない気持ちになった…


僕は歩きながら ツバサに質問をすることにした。ツバサには色々と聞きたいこともあるしな。


『てかツバサ…その背中のヤツはいつからあるんだ?』


『え?コレ?…いつからだろう?…多分この道路の上にいた時からすでにあったんだと思う…』


『その背中のヤツができた原因は分かるか?』


『いや分かんねぇよ…分かってたら あんたに話してっから!!』


『まぁ…そうだな…』


『てかさぁ…もういっその事この背中のヤツ剥がしてくんねぇ?』


『…いや無理だろ!?それ無理やり剥がしたらお前死ぬんじゃねぇのか!?』


『きっと大丈夫…今なら大丈夫な気がする!!』


ツバサは自信満々に答える。


いや馬鹿だ…絶対馬鹿だ…それに今なら大丈夫な気がするってどういう事だよ…大丈夫な時と大丈夫じゃない時の差はなんなんだ?気持ちの問題か?


僕はツバサの背中のヤツをまじまじと見た。それはどう見ても ツバサの背中にガッチリとくっついている…というより背中の皮膚から直接生えているように見えた。


こんなもん剥がしたら出血多量で死ぬだろ…


『ん?』


僕は気が付いた。


ツバサの背中のヤツは カドが少し角張っていた。それは骨のように見える…中に骨が通っているようだが…まさか肋骨が直接背中に突き出てしまっているのではないだろうか?…僕は怖くなった。


…これはツバサには黙っておこう…言ったところで ツバサを余計不安にさせてしまうだけだ。


『ん?って何だよ!?なんかあんのかよッ!?』


ツバサは不安そうな顔で僕を見た。


『いや…まぁやっぱり引き剥がすのはやめた方がいいだろ…病院でちゃんと見てもらった方がいい』


『分かってるって、冗談で言ってみただけだ』


この状況でそんな冗談を言われても正直 笑えない…つか冗談で言ってるのか 本気で言ってるのかさえ 僕にはよく分からなかった。


そんな なんの進展もなさげな会話を繰り返しながら、僕らは道路の上をひたすら歩いて行った。


しばらくすると 道路の先にトンネルが見えた。


トンネルを見ると 中は真っ暗だったが、入り口付近に一瞬 女の人のような影がチラッと見えた。


『お!誰かいる!?』


ツバサはトンネルに向かって駆け出した。走っているツバサを見る限り、やはり僕みたいに とてつもないスピードで走ることはできないようだ。


僕はツバサの後を追おうと 走ろうとしたが、ここですごいスピードで走ってしまっては ツバサが驚くだろうと思い…歩いてトンネルへと向かった。


ツバサは そのままトンネルの中に入って行った。すぐにツバサとその女の話し声が こっちに聞こえてくるんじゃないかと期待したが…妙に静かだ…


おかしいなと思いながらも…僕はトンネルの目の前までたどり着いた。中は異様なほど真っ暗だ…それに静かすぎる…ツバサはどうしたんだ?…


『ツバサ?』


僕はトンネルの中へ呼びかけてみたが…反応はない。まさか…何かあったのか…


不安と恐怖が僕の中に込み上げてきたが…僕は恐る恐るトンネルの中に足を踏み入れた。


中は真っ暗で何も見えない…


『動かないで…』


女の人の声が聞こえた。


僕は声が聞こえたを方を見た…だが真っ暗で何も見えない。


『あんた誰だ?』


僕は女に尋ねた。


『あなたこの状況が分からないのッ!?』


女は少し声を荒げた。


この状況と言われても、真っ暗で何も見えない…


だが だんだんと目が慣れてきて、僕は今の状況を理解することができた。


僕の目の前にはツバサがいる、その後ろには ツバサの後頭部に銃を突き付けた女が立っていた…


『沙織さん…これからどうするの?』


そのさらに後ろから 女の子の震えた声が聞こえた。もう一人いるのか…この人達の目的は何なんだ?…考えても僕には分かりそうにない。分かったのは この銃を持った女は サオリという名前だということだけだ。


『とりあえず雅也さんが来るのを待つわ…それからどうするか考えましょう』


と サオリは言った。マサヤさん?…もう一人仲間がいるのか……僕達はこれから何をされるのだろう?…


もしかしたら殺されるかもしれない…いや殺すんだったらもうすでに殺されているか…とにかくただではすまない気がする…このままじゃヤバいな…


どうにかして あのサオリという女から銃を奪うことはできないだろうか?…


僕は考えた。


僕の足の速さなら…もしかしたら なんとか銃を奪うことができるかもしれない…

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